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【ブラッセル駐在員事務所】島森 宏夫、山田 理 1.食用に供する30ヵ月齢超の牛のBSE全頭検査を開始(EU) 牛海綿状脳症(BSE)問題の影響で域内の牛肉消費が減退する中、食用に供さ れる30ヵ月齢超の牛を対象としたBSEの全頭検査が1月1日から開始された。さ らに、7月には、24ヵ月齢超の農場で死亡した牛など食用に供されない牛でも全頭 検査が開始された。1〜8月までの迅速検査総数(臨床症状からBSEが疑われた 牛、BSE牛の同居牛・子牛などを除く)は約460万頭に上り、375頭のBSEが確 認されている。 2.イギリスで口蹄疫が大発生 イギリスで2月20日、20年ぶりに口蹄疫の発生が確認された。その後9月30日ま でに発生件数は2,030件となり、清浄化のための殺処分として398万頭、過密飼養を 避けるため動物福祉の観点から201万頭の家畜がと畜・廃棄されるなど、同国の畜 産業は大きな打撃を受けた。10月1日以降、新たな発生は確認されておらず、一部 地域からの食肉輸出が順次認められている。なお、イギリスから輸出された生体羊 などを通じて、フランス、オランダ、アイルランドにも口蹄疫の発生が拡大した。 3.肉骨粉の飼料利用を全面禁止(EU) BSE対策の一環として、肉骨粉の飼料利用が1月1日から全面的に禁止された。 4月24日に開催された農相理事会では、当初6ヵ月間としていた禁止措置を7月以 降も延長することが承認された。EU委員会は、禁止措置の解除を判断するために は、BSEに関するEUおよび各国規定の有効性に関するさらなる調査と、より多 くのBSE迅速検査の結果が必要であるとして、禁止措置の延長を提案していた。 4.EU委、GM食品・飼料規則を提案 EU委員会は7月25日、遺伝子組み換え(GM)食品および飼料に関する規則案 を採択・提案した。同提案では、GM食品や飼料について、すべての流通段階での 追跡可能性の確保、表示の義務付けなどが細かく規定されている。今後、EU理事 会および議会で共同審議され、遅くとも2003年には施行される予定である。 5.BSE問題で落ち込んだ牛肉消費が徐々に回復(EU) EU委員会が公表した資料によると、11月時点の牛肉消費量は5.25%減(前々年 同期比)で、1年前のBSE問題の再燃時に比べるとかなり回復している。2001年 の1年間では前年に比べて9〜11%の減少と見込まれる。昨年末から今年前半にか けてのBSEおよび口蹄疫による危機的状況から、ゆっくりではあるが着実に回復 してきている。 6.牛肉価格・需給対策を強力に推進(EU) EU委員会から提案された牛肉価格・需給対策が、6月19日に開催された農相理 事会において修正の上、承認された。今後の牛肉生産を抑制し、BSE問題再燃の 影響で緩和した牛肉需給バランスの回復を主な目的としており、粗放的生産の奨励、 特別奨励金の国別交付上限頭数の削減などが行われることとなった。このほか、介 入買上げなどにより、大量の牛肉の市場隔離・排除が行われた。 7.脱脂粉乳に対する輸出補助金が一時ゼロに(EU) EUの乳製品管理委員会は7月12日、同13日からの脱脂粉乳および全脂粉乳など に対する輸出補助金の単価引き下げを採択した。この結果、脱脂粉乳の補助金単価 はゼロになり、事実上、脱脂粉乳に対する輸出補助が停止された。しかし、EU産 脱脂粉乳の輸出競争力低下などを背景に、11月16日には輸出補助が再開されている。 8.動物福祉の改善は着実に前進(EU) EU委員会は4月9日、動物福祉の観点から、家畜を長期間輸送する際の換気や 室温などの輸送環境を改善する提案を行った。また、11月9日には、豚の飼養基準 を改定・強化することを決定するなど、動物福祉の改善は着実に進んでいる。EU は、世界貿易機関(WTO)交渉においても、動物福祉を交渉で取り組むべき課題 の1つと主張しており、今後の展開が注目される。 9.EU委、CAPの中間見直しを控え、各地で意見交換会を開催 EU委員会は、共通農業政策(CAP)の中間見直しを2002年に控え、消費者、 農家、食品・小売業界および有識者の代表など集めて、農業・食品に関する意見交 換会を開催した。5月28日に開催されたストックホルムでの会合を皮切りに、各地 で開催され、幅広い層の関係者から、将来のEU農業の方向性などについての意見 を募った。 10.欧州食品機関の設立に向けて準備進む(EU) 欧州食品機関(EFA:European Food Authority)の設立に向けて、暫定諮問 委員会の第一回会合が5月7日、加盟国政府の食品安全を所管する組織の代表者等 を集めて開催されるなど、関係機関の連携強化が開始された。一方、EFAに関す るEU規則は、2000年11月に公表されたEU委員会の提案を基に、理事会と欧州議 会での共同審議が進められており、2002年初めには最終的な承認を受ける見込みで、 2002年のEFA設立に向けての準備が進められている。
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