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亜国で電子機器を利用した家畜管理の取り組み



【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 2月1日発】アルゼンチンでは2000年10
月、生産者や食肉処理加工業者の家畜売買、処理頭数などの虚偽の申告に対処する
ため、電子機器を利用した家畜管理の検討を含めた脱税対策法が成立した。小規模
生産者でも実施可能な低コストのシステム開発がねらいである。

 従来、アルゼンチンからEUへのヒルトン枠輸出の衛生条件として家畜の追跡可
能性(トレーサビリティー)が求められており、同国では将来に備えマイクロチッ
プ(以下「チップ」)やバーコード付き耳標(以下「耳標」)を使って強度、精度、
安全性などの比較試験を実施してきた。チップによる家畜管理を限定的に実施して
いる農場もある。

 2000年10月末、フランスに端を発したBSE問題で、EUがさらに厳しいトレー
サビリティーを要求してくる可能性もあるとして、畜産業界は電子機器を利用した
家畜管理の重要性を再認識している。

 実施主体、装着機器の種類の議論に先立ち、政府と民間の意見が分かれているの
は管理すべき情報内容である。政府は畜産統計、家畜移動の追跡、衛生管理、脱税
対策に必要な最小限のデータを管理すればよいとするのに対し、生産者など民間サ
イドは品種、肥育方法など家畜取引に必要なあらゆるデータをカバーしたいとして
いる。

 農畜産品衛生事業団(セナサ)の実施した、チップ、耳標、ボーロ(胃の中に入
れる子器)の比較試験では、放牧主体のアルゼンチンの場合、脱落や強度の点では
耳標に比べチップの方が好成績だったが、当初言われていたほどの差はなかった。
また、耳標でも丸型は脱落や損傷が少なく丈夫だった。一方、安全性の点ではチッ
プとボーロが劣った。特にチップの場合、耳の後ろに埋め込まれたチップが牛の体
内を移動し、食品などの製品に混入する可能性があると指摘されている。  

 コストの点では、チップ1個当たり2〜3ドル(約234〜351円:1ドル=約117円)
に対し、耳標は1個50セント(約89円)以下である。農牧水産食糧庁は、チップを
初生牛1頭ごとに埋め込む手間とコストは相当大きいと考えている。

 脱税対策に電子機器の利用を検討する法律はできたが、実施するには問題が多い。
農牧水産食糧庁は電子機器、特にチップを利用した脱税対策には興味を示していな
い。同庁は、むしろ国立農牧取引管理事業団(オンカ)とその登録食肉処理加工業
者の管理強化が先決としている。工場側の作為的な操作がなされないようオンカと
食肉処理加工施設をオンラインで結び正確な食肉処理量をコンピュータ管理するの
が同庁の狙いのようだ。


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