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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 2月1日発】EU委員会のシュライヤー予算担 当委員は1月31日、牛海綿状脳症(BSE)対策強化のための予算として、9億7,100 万ユーロ(約1,050億円:1ユーロ=108円)を追加する提案を発表した。EUでは、 昨年12月、消費者の牛肉の安全性への不信増加による牛肉消費の減退に対応し、一 層のBSE対策強化を決定したが、その財源確保が課題となっていたため、2000年 の余剰分を対策費として充当することを提案した。 その主な内訳は、危険性の高いと考えられる、30ヵ月齢を超える牛の牛肉廃棄計 画(7億ユーロ、牛肉53万トン相当)、牛肉介入買い入れ(2億3,800万ユーロ)、 BSE検査費(3,300万ユーロ)となっている。本提案が、理事会および議会で認 可されると、2001年の農業関係予算総額は440億ユーロ(約4兆7,500億円:前年比 7.44%増)に達する予定である。 一方、フィシュラー農業担当委員は、1月29日に開催されたEU農相理事会にお いて、以下のように説明し、BSE対策の適正実施について各国に協力を要請した。 ・牛肉危機は予想以上に深刻である。今までに牛肉消費は27%減少しているが、域 外国の牛肉輸入禁止の継続、2000年にと畜されなかった牛の2001年へのと畜繰り越 しが見込まれるとともに、2001年の消費量も10%以上減少する可能性がある。 ・2001年に消費が10%減少し、50万トンの牛肉廃棄計画(30ヵ月齢を超える牛の牛 肉の買い上げ・廃棄)が完全実施されると仮定すれば、2001年の牛肉供給過剰量は 79万5千トンと推計される。介入買い上げは、予算上の問題だけでなく、倉庫収容 能力の問題がある。介入買い上げの対応では支出が膨らみ、他の農産品の補助削減 が必要となってくる。予算超過を抑えるため、12月に合意されたように、安上がり で効率的な牛肉廃棄計画の活用を願いたい。 ・牛肉廃棄計画の現在までの実施状況については、フランスとアイルランドの実施 がほとんどで、この他には、スペインとルクセンブルグがわずかに実施しているの みである。実施総数は約5万7千頭で、その内訳はフランスが60%、アイルランド が28%となっている。その他の国については、ドイツ、イタリア、ポルトガルおよ びギリシャは未実施である。また、フィンランドとスウェーデンはBSEの危険性 が低いので計画から除外され、オランダとデンマークも、全量のBSE検査が可能 なため、除外されている。さらに、オーストリアとベルギーも除外を要望している。 なお、イギリスは既に同様の政策(OTMS)を実施している。 ・また、今後EUにおける牛肉生産を制限するため、各国と共同して他の対策(例 えば、子牛の早期出荷奨励、粗放的飼育を一層推進するために奨励金交付条件であ る飼育密度の低減)の導入に向けた検討も必要である。さらに、各国の競争力のわ い曲を回避するため、各国で独自に行っているBSE対策への援助すべてについて の通報をお願いしたい。委員会では次回農相会議にこれを取りまとめた報告書を提 出する予定である。
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