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【ワシントン駐在員 樋口 英俊 1月31日発】米保健社会福祉省食品医薬品局 (FDA)は1月30日、国産肉牛の肉骨粉を含む飼料が給与されていた疑いにより、 隔離されていたテキサス州の肉牛に関する調査結果を発表した。米国では、牛海綿 状脳症(BSE)防止の観点から、97年以降、ほ乳類由来の飼料を反すう動物に給 与することが禁じられているが、これらの肉牛については、禁止された原料が混入 した飼料を摂取したという疑いがもたれたため、FDAは、念のために1,222頭の 肉牛を隔離して事実関係の調査を行っていた。 FDAは今回の発表の中で、これらの肉牛は肉骨粉を摂取したものの、摂取量が 1頭当たり5.5gと、その体重に比べてもわずかな量であること、また、混入した 肉骨粉は国産牛由来のものであり、米国ではBSEの発生が全くないことなどから、 BSEに関連した潜在的なリスクは極めて低いとして、感染の危険性を否定した。 また、同局は今回の一連の対応について、食品の供給を守るためには、何重ものセ ーフガードが必要であることを示すものであり、引き続き関係当局とともに当該措 置の完全順守に向けて努力していくとしている。 一方、今回問題となった飼料を供給した飼料メーカー最大手のピューリナ・ミル ズ社は、FDAの発表にもかかわらず、自主的にこれらの牛を全頭買い取り、食品 として流通させないことを明らかにした。 肉牛の生産者団体である全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は1月25日、テ キサス州の牛の隔離報道につき、この問題は食品安全性ではなく、飼料の規則順守 の問題であるとして、マスメディアに冷静な対応を呼びかけた。また、1月29日に は他の食肉や飼料の関係団体などと共同で、@BSEの病原体の侵入を防止する輸 入規制の厳格な実施、AFDAの飼料規則の完全順守、B米農務省(USDA)の BSE監視プログラムへの積極的な協力の3点を、業界および政府の優先課題とし て示すとともに、BSEの発生防止を誓った共同声明を発表した。 BSE対策にはFDAのほか、USDAも関与しており、その主なものを時系列 で挙げると、89年:イギリスその他のBSE発生国からの反すう動物およびそれら に由来する製品の輸入禁止、90年:BSE監視プログラムの導入、97年:欧州全域 からの反すう動物およびそれらに由来する製品の輸入禁止、2000年:欧州からの (レンダリングされた)動物性たんぱく質製品(畜種は問わない)の輸入禁止など がある。BSE監視プログラムには、立てなくなった牛などの脳の検査、BSEの 症例に関する関係者への教育、禁止以前にイギリスから輸入された牛の監視、民間 獣医師などのネットワークの形成などが含まれる。なお、USDAは今後、脳の検 査を行う牛の数を増やすことを計画している。 米国の牛肉需要は、このところ好調な景気などを背景に堅調に推移してきたもの の、経済が減速していることから、BSE問題で軟化することも、一部の関係者か ら懸念されている。
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