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【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 2月8日発】アルゼンチン国家統計局の 統計によると、99年の羊飼養頭数は、羊毛価格下落などの影響を受け、93年に比べ 26%減の1,370万頭となった。また、飼養頭数に占める羊毛種のシェアが46%、毛・ 肉兼用種および肉用種のシェアが54%と推定されている。 羊飼養頭数の地域別内訳では、同国南部パタゴニア地域が全体の約6割を占める。 同地域は、肥よくで温暖なパンパ地域とは対照的に、やせた土壌で冬季の気候条件 が厳しい。アルゼンチンの羊毛・羊肉生産は、パンパ地域で牛肉や穀物生産が盛ん になるにつれ次第に南下した。 また、州別内訳を見ると、パタゴニア地域に属するチュブト州、サンタクルス州 がそれぞれ408万頭(シェア30%)、207万頭(同15%)で、次いで多いのがパンパ 地域の中心ブエノスアイレス州で193万頭(同14%)などである。 国立農牧取引管理事業団の統計によると、2000年の羊と畜頭数は71万8千頭と、 96年に比べ31%増加している。これは、羊毛価格下落などにより羊のとう汰が進ん だことが挙げられる。と畜頭数の地域別シェアは、パタゴニア地域が79.1%、パン パ地域が20.8%を占める。また、食肉処理加工業者5社で全と畜の72%を占めてい る。 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)がまとめた同国の羊肉需給に関す る報告書によると、最近2〜3年の生産量は8千〜1万トン、輸入量は生産量の2 割程度で推移している。同国では、ラム肉を中心に外食産業からの需要があるが、 国内生産が安定しないことから、需要の一部を輸入に依存している。 2000年の輸出量および輸入量(製品重量ベース)の推移を見ると、輸入量は前年 比12%減の1,683トンである。輸入相手国のシェアは、ウルグアイが89%、チリが 9%、ニュージーランドが2%である。また、輸出量は前年比3.7倍の1,557トンと なった。輸出量の増加要因としては、SAGPyAによる生産者に対する融資策に より生産量が増加したこと、パタゴニア地域の生産者が、現地の食肉処理加工業者 と提携し、輸出市場などへの羊肉販売を強化したことなどが挙げられている。輸出 相手国のシェアは、スペイン向けが49%、イタリア向けが21%、イギリス向けが13 %などである。 年間1人当たりの羊肉消費量は、全国平均で290gとわずかだが、パタゴニア地域 について見ると15〜26kgと、極めて地域性が高い食肉であるといえる。 SAGPyAは、パタゴニア地域を中心とした同国の羊肉産業について、近年に おける羊飼養頭数の減少が同産業の成長の限界を示しているものの、アルゼンチン 産羊肉がEUに受け入れられる品質であることから、原産地表示、有機認証により 競合する食肉に対する差別化を図ることなどで同産業の競争力が向上する可能性も あるとしている。しかし、歩留まりの高い家畜を確保するための品種改良計画、消 費者の羊肉に対する知識、羊に関する統計情報などが不十分であること、国土が広 大であるため生産、加工、流通間の円滑な調整が困難であることなど課題も多いと している。
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