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【シドニー駐在員 野村 俊夫 2月8日発】ニュージーランド(NZ)の食肉・ 羊毛エコノミック・サービスによると、同国の肉牛・羊生産者は、85年に新経済政 策(規制緩和)が導入されて以来、15年ぶりの好景気に沸いている。過去1年間の 良好な気象状況が食肉や羊毛の生産量を増加させており、NZドル安が生産者の手 取りを押し上げたことに加えて、国際需給のひっ迫見通しなどが先行きを明るくし ている。 これによると、NZの南北両島では過去12ヵ月間にわたって比較的良好な気象条 件に恵まれた結果、肉牛の飼養頭数が2年間続いた干ばつの以前の水準に回復した ほか、羊の飼養頭数はほぼ横ばいにとどまったものの、ラム用子羊の生産率が過去 2番目に高い記録となった。また、全般的な飼養条件の改善により、家畜1頭当た りの生産効率も向上した。 米国向け(加工原料用)を中心とする牛肉輸出は2000年を通じて好調に推移し、 95年にガット・ウルグアイラウンド合意が実施されて以来、初めて米国の年間関税 割当数量を上回った。羊毛需要も昨年後半から回復し、国際羊毛取引価格が大幅に 上昇した。加えて、予想外の為替相場のNZドル安が農産物輸出業界に追い風をも たらし、生産者の手取りをさらに増加させた。 この結果、2000/01年度における肉牛・羊経営の1戸当たり平均収益(課税前) は前年度に比べて11%増加し、6万1千NZドル(約317万円:1NZドル=52円) に達すると見込まれている。これは84/85年度以来実に15年ぶりの高収益となる。 エコノミック・サービスは今後の見通しについて、牛肉価格は米国の肉牛飼養頭 数減少によって維持され、ラム価格はEUの需要増加と在庫減少によって上昇、羊 毛価格も高値が期待できるとしている。このため、為替レートが1NZドル=0.45 USドル程度に維持されれば、肉牛・羊経営の1戸当たり現金粗収入も前年度より 約7%の増加になると見込んでいる。 一方、NZの肉牛・羊経営が過去長期にわたって厳しい経営を強いられてきたこ とから、生産者は今季の収益を消費材の購入に費やすことなく、借金の清算や土地 改良の肥料購入に充てることになるだろうとも予測している。 NZの肉牛・羊経営は、もともと条件不利地で多く営まれていたことから国際相 場の影響を受け易く、82年に7千万頭に達した羊飼養頭数が4千5百万頭(2001年) に激減し、肉牛飼養頭数も74年の630万頭から490万頭(同)に減少した。全経営面 積も86年から99年までの13年間に14%減少し、かんがい利用による酪農経営への転 換や放牧地への植林が進められている。このうち、酪農経営への転換は過去7年間 で1,340戸、植林面積は過去6年間で33万ヘクタールに達した。 15年ぶりの好景気が到来したとはいえ、肉牛・羊経営の現状は決して甘くないこ とがうかがえる。
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