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肉牛生産者団体、ブッシュ米大統領の減税案を歓迎



【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 2月18日発】ブッシュ米大統領は2月8日、
選挙公約でもあった、1兆6千億ドル(約187兆円:1ドル=117円)に上る今後10
年間の大型減税案を議会に提案した。その中には、@所得税率区分の簡素化と税率
水準の引き下げ(現行の15〜39.6%の5段階から、10〜33%の4段階へ)、A共働
き世帯に過重となっている税負担の軽減、B相続税の段階的廃止などが盛り込まれ
ている。

 特に、相続税に関しては、広大な土地基盤を有する家族肉用牛経営にとって、後
継者への経営継承を阻害するものであるとして、全国肉牛生産者・牛肉協会(NC
BA)が中心となって、その廃止を求める運動を長年にわたって展開してきた。具
体的には、相続税の納税義務がある農家にとって、@会計士や弁護士に依頼し、法
外な納税額が課せられないようにするか、A経営を継続する上で必要不可欠な土地、
建物、家畜などの資産を売却するしか手立てはなく、どちらに転んでも、家族経営
の崩壊につながるとの主張である。昨年9月には、上下両院を通過した相続税廃止
法案が、クリントン前大統領の拒否権発動によって廃案になるという憂き目に会い
ながらも、今月3日に終了したNCBAの年次総会においては、相続税の廃止をは
じめとする減税要求などが再確認された。

 8日公表の減税案においては「家族農業経営や自営業に対する相続税の賦課は、
アメリカン・ドリームに相反するものである」とのブッシュ大統領の見解が示され
た。これを受けて、NCBAのコーンウェル会長は「肉牛農家における税負担を軽
減するブッシュ大統領の提案を心から支持する」と述べた。

 ただし、現在の税法では、367万5千ドル(約4億3千万円)以上の遺産に対して、
55%の相続税が適用されるため、富裕層のみがその廃止の恩恵を受けることになる
との批判的な見方や、相続税の存在が、資産家から教会や慈善団体などへの寄付を
促す役割を果たしているとして、相続税の存続を求める声も上がっている。また、
減税規模に関しても、財政圧迫を懸念する民主党が減税総額の引き下げを主張する
など、共和、民主両党の勢力が伯仲する議会では、かなりの難航も予想されている。

 今回の大統領による減税案とは別に、現在議会には、超党派の議員によって複数
の減税法案が提出されているが、コーンウェル会長は「最終的にこれら法案が成立
するまで、働き掛けを続けていく」との立場を併せて表明している。

 なお、先のNCBAの年次総会においては、減税要求以外にも、@飼料作物の干
ばつ被害に対する作物保険制度の適用、A家畜疾病のまん延防止のための自主的な
個体識別プログラムの導入、B家畜取引情報報告義務化制度をはじめとする、適正
な取引価格の形成に向けた取り組みの強化、C環境保護規制に対処した農家への支
援、D牛肉の品質向上と栄養・健康に関する消費者への情報提供などについて、意
思統一がなされた。


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