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【シンガポール駐在員 小林 誠 1月11日発】ミャンマーでは、鶏肉、鶏卵を 中心とした畜産物の不足が深刻であり、昨年末から今年1月にかけて、中央畜産 連盟のもとに地方レベルでの畜産連盟を設立し、畜産物の増産体制を確立する動 きが急ピッチで進められている。 現在、ミャンマーは肉類および鶏卵の輸入を禁止しており、引き続く軍政の下、 諸外国の経済制裁措置などにより外国からの投資も制限されており、食肉・鶏卵 を中心とした畜産物の生産も停滞している。一方、牛乳・乳製品については、も ともと牛乳を飲用する習慣がなく、お茶やコーヒーに添加する消費形態が中心で あり、輸入粉乳から製造した加糖れん乳がほとんどを占めている。 このような状況の中、畜水産省の指導・監督の下、同省が資本金を出資して、 99年10月に国家計画・経済省の認可を受けて中央畜産連盟が設立され、畜産物の 増産体制の整備が急がれている。同連盟は、畜水省畜産獣医局が任命した45名の 会員で構成されており、昨年12月以降、今年1月中をめどに各州、各地域レベル での畜産連盟の設立が進んでいる。これまで設立が完了したのは、ミャンマー14 州のうち10州であり、委員総数は642名となっている。なお、中央畜産連盟では、 会員の中から18名の執行委員が互選されており、養鶏、養豚、飼料会社の経営者 が中心となっている。 同連盟の活動は、州レベル、地方レベルでの畜産連盟を整備し、技術の普及、 流通の改善を図ることにより、畜産物の増産、品質の改善を行うことが中心とな っており、四半期ごとに畜水産省に対し活動の進捗状況を報告することが義務付 けられている。通常、普及業務は、首都ヤンゴンや北部の中心都市マンダレーの ような大都市部を除き、政府職員によって行われることになっているが、十分に 機能しているとは言えず、このことが今回のような産業界を総動員した形での体 制整備が急がれている要因であると考えられる。 ミャンマーでは、牛は役用が主体となるため、15歳齢以下の牛のと殺が禁止さ れている。従って、牛肉は一般に極めて硬く、昨年12月末日現在の市場価格も1 kg当たり375キャット(約101円:1キャット=0.27円)と、鶏肉(625キャット= 約169円)の6割程度となっている。豚肉は、牛肉と鶏肉の中間程度である。ま た、鶏卵は1個当たり16キャット(約4円)となっている。 ミャンマーでは、既に昨年8月から、タイのチャロン・ポカパン(CP)グル ープが契約農家制による採卵鶏の一貫経営を開始しており、豚を介するウイルス 性脳炎の発生により壊滅的な打撃を受けたマレーシアの養豚企業も、ミャンマー の首都ヤンゴン近郊で、マレーシアへの輸出を前提とした大規模養豚場を設立す る動きが見られている。昨年12月以降、州畜産連盟の設立に関する新聞記事がか なり頻繁に掲載されており、連盟の設立に当たり、軍・政府高官が出席し、畜産 物の増産を強調していることから、畜産物不足がかなり深刻な状況であることが 推察され、今後の動向が注目される。
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