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家きん肉の水分残留に対する規制を強化(米国)



【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 1月11日発】米農務省(USDA)は1月9日、
家きん肉の水分残留を規制するための連邦規則を公表した。

 食鳥処理工程においては、内臓除去後に水で洗浄され、丸どりまたは分割さ
れた段階で、水に浸して冷却するという方法が一般的に用いられている。この
場合、表皮や皮下組織などに水分が付着・浸透するため、これまでの規則では、
洗浄・冷却前後の重量比で8%(丸どりの場合)までの水分残留が認められて
いた。一方、洗浄後、枝肉を懸垂し、冷気によって温度を下げる方法がとられ
る食肉(牛肉、豚肉など)については、こうした水分の残留が認められていな
かった。このため、アイオワ州の肉用牛および豚の生産者グループは、家きん
肉は、重量が「水増し」され、流通・販売されているとして、USDAを相手取
り訴えを起こし、最終的には、同州の連邦裁判所が97年7月に、「恣意的で一
貫性がない」として、規則を無効にすべきとの判決を下した。今回の規則は、
この判決に従って見直されたものであり、内臓除去後において付着・浸透した
水分の残留に関し、食肉、家きん肉ともに共通の規制が加えられることとなっ
た。

 具体的には、事業者が食品衛生上の基準を満たすために必要な措置として、
やむを得ない場合を除き、水分の残留は認められないというものである。USD
Aは、食鳥処理工程における浸水冷却方式について、細菌の繁殖を抑制し、と
鳥後4〜8時間以内にと体温度を華氏40度(摂氏約4度)以下にまで引き下げ
なければならないという基準を効率的に満たす有効な手法であるとしている。
このため、USDAは、事業者が、USDA食品安全検査局(FSIS)に対し、
あらかじめ定めた方法によって収集したデータを基に、水分残留の妥当性を証
明することを条件に、水分の残留を例外的に認めるとしている。

 さらに、こうした食肉または家きん肉が商業的に取引される場合、消費者へ
の情報提供を図る観点から、@水分の残留がある場合には、その最大残留割合
を、A残留がない場合には、その旨をそれぞれ表示することが義務付けられる
こととされた。

 FSISは、1年後の施行に向けて、関連する手続きやデータベースの整備
を行うとともに、また、将来的には、事業者に共通して適用される水分残留基
準なども設定していくとしている。

 制度の見直しを求めてきた全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)や全国豚肉生
産者協議会(NPPC)が、今回の規則制定について、一様に歓迎の意を表明する
中で、全国鶏肉協議会(NCC)のロブ会長は、鶏肉の売り上げにはほとんど影響
を与えないとの強気の発言を行っている。

 なお、任期わずかなクリントン政権による一連の駆け込み的な新規則制定の
動きの中で、食肉の栄養成分の表示やリステリア菌の検査を義務付ける規則な
どが、今後相次いで制定されるのではとの見方もある。


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