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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 1月18日発】EU科学委員会は1月17日、牛 肉およびその副産物が牛海綿状脳症(BSE)の感染源となる危険性に関する追加 見解を公表した。これは、昨年12月4日のEU農相理事会で提起された質問への回 答として出されたものである。この見解に基づき、今後の農相理事会などで、加盟 国ごとにバラバラなBSE対策の斉一化に向けた議論が展開されるものとみられて いる。 質問事項としては、5部位(@脊柱とTボーン(牛の腰部の骨付き)ステーキ、 A牛の胸腺と脾臓、Bレンダリングで得られた油脂、C皮革以外から得られた水溶 性たんぱく、D機械的にはく離し回収された反すう動物の食肉)がBSE感染源と なる危険性についての見解が求められた。 今回出された見解の概要は以下の通り。 まず、魚以外の家畜由来飼料(肉骨粉)の全面禁止など危険回避のための予防措 置が十分厳格に実施されている場合については、そもそも牛のBSE発生の危険性 は低いと考えられるとしている。その条件とは、@食用の動物だけが使われている こと、A動物性飼料の全面禁止が適正に管理されていること、B効果的な臨床学的 調査、BSE検査が実施されていること、CSRM(BSE感染の危険性の高い特 定部位)が食用および飼料用から除去されていること、DBSEを発症した牛から 生まれた子牛はとう汰されていることである。この条件を満たせば、現状では、質 問の5部位の使用について規制する必要性はないと思われる。 それ以外の場合、すなわち、動物性飼料禁止が適正に実施されていない場合、ま たは、この措置の以前に生まれた動物については、BSE感染の危険性がより高く、 条件の@、B、C、Dは満たしているとの仮定の下で、前述の質問事項への回答は 次のようになる。 一般的に、BSEの潜伏期の後期から、背根神経節および脊髄は感染の危険性が 増すので、12ヵ月齢を超える牛の脊柱は、背根神経節との密接な結合および脊髄か らの複合汚染の危険を考え、SRMと見なすべきである。また、イギリスのDBE S(生年月日に基づく輸出措置)のように厳格に管理され牛のBSE感染の危険性 が低い場合を除き、12ヵ月齢を超える牛からの骨付き牛肉は消費すべきではないと いう意見に賛成である。12ヵ月齢を超える牛の脊柱または頭がいから機械的にはく 離し回収された牛肉についても危険と考えられる。なお、牛の年齢、部位により牛 肉を分別することの実施の可能性については懸念がある。 レンダリングで得られた反すう動物由来の油脂については、代用乳や飼料として 若齢の反すう動物が大量に消費する可能性を考慮すれば、BSEの感染源となる可 能性を排除するために、固形分含量が0.15%以下になるよう精製するとともに、B SE病原因子を不活化または感染力を低減させるため「133℃、20分、3気圧」、 または、同等の条件で飼料用油脂を処理すべきである。また、複合汚染などの危険 をなくすため、反すう動物由来の油脂を反すう動物以外向け飼料として使う場合も 同様に処理すべきである。 この他、牛の胸腺と脾臓は現在までのところ、危険とは考えられない。皮革など SRM以外から得られた水溶性たんぱくも適正な製造・調達が行われる限りSRM とは考えられない。
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