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【ワシントン駐在員 樋口 英俊 1月18日発】グリックマン農務長官は1月11日、 昨年8月18日から9月21日の間に豚肉チェックオフ制度の存廃をかけて実施された肉 豚生産者などによる全体投票の結果を公表した。これによれば、同制度の継続を求 めた票が1万4,396であったのに対して、廃止を求めた票が1万5,951と、小差ながら もこれを上回ったため、88年以来実施されてきた同制度は廃止される運びとなった。 グリックマン農務長官は今回の投票結果を受け、米農務省(USDA)の担当部 局である農業マーケティング局(AMS)に対して、豚肉チェックオフ制度の廃止 に向けた規則制定などの作業に着手するよう指示したことを明らかにした。同長官 は、この決定が豚肉業界に重大な影響を与えることは認識しているとしながらも、 あらゆる観点から考慮して、同制度を今後も維持し、根拠法の意図する目的を達成 するためには、チェックオフを支払う者の同制度への支持が不可欠であるとの考え を示した。 同制度の実施機関であり、その継続を強く働き掛けてきた全米豚肉生産者協議会 (NPPC)は、今回の結果に大きな失望感と懸念を表明するとともに、投票手続 きの不備により、同一人物が実際の投票と不在者投票を別の郡で行うなどの不正が あったとして、その結果に疑問を呈した。これに対して、USDAのヴィアデロ監 査室長(Inspector General)は、投票に際して監督的な立場でかかわったAMS などのほか、NPPCに対しても聞き取りなどの調査を行ったが、そうした事実は 確認できなったとして、さらに調査を続ける根拠はないとの立場を示した。 一方、NPPCは今回のUSDAの決定を差し止めるべく、賛同する州レベルの 生産者団体や養豚生産者らとともに、裁判所の禁止命令を求めていくものとみられ ている。また、全米最大の養豚生産州であるアイオワ州では全米レベルの制度が導 入される以前に行われていた州レベルのチェックオフ制度(肥育豚などの市場価格 の0.25%を徴収)を再開することが、早くも検討課題に挙げられているようだ。 今回の投票結果については、豚肉業界だけではなく、他の関連業界からもその影 響を懸念する声が出ている。例えば、米国大豆ボード(USB)は、大豆かすが豚 の飼料として大量に使用されていることから、チェックオフ資金を利用した国内外 における需要拡大などの事業の中止による豚肉、ひいては大豆かすの需要減退を憂 慮している。 こうした中、USDAは1月17日、牛肉のチェックオフ制度について、一部の団 体が全体投票の実施をUSDAに求めていた件で、請願者の署名数がその実施に必 要な規定数に達しなかったことを発表し、豚肉との明暗を分けた形となった。 ※グリックマン農務長官は、1月19日をもって退任の予定
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