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豪州で酪農乳業などの官民共同研究プロジェクト実施



【シドニー駐在員 幸田 太 1月25日発】豪州連邦政府は1月18日、酪農乳
業、羊産業を含めた合計19の産業に対して、新たに今後7年間の長期にわたり総額
3億2,500万豪ドル(約211億円:豪ドル=65円)を投じて、官民共同研究所(Co-
operative Reserch Center: CRC)プロジェクトを実施することを発表した。連
邦政府、大学、民間企業、研究機関が共同で行うこととなる。

 CRCプロジェクトは、90年に18億ドル(約1,170億円)を投入して、産業科学
資源省の指導監督の下、グローバルな視野に立ち官民の枠にとらわれない世界レベ
ルの共同研究の場として各産業ごとに組織された。CRCプロジェクトは、IT産
業、農業関連産業、鉱物、輸送、建築、環境という幅広いフィールドをカバーして
いる。今回の19プロジェクトの開始は2001年7月1日となっており、豪州全体で累
計83の研究所でCRCプログラムが実施されることとなる。また、現在までにCR
Cによる数々の研究成果が報告、実践され関係業界の期待と信頼を得ている。

 酪農乳業については、1,700万豪ドル(約11億500万円)の予算で遺伝子技術開発
を目的とし、@優良な乳質に関与する遺伝子を選択するようなDNA解析、A健康
促進に役立つ乳製品の開発、B乳成分の向上、C食品、製薬産業などでの利用、D
優良血統牛をクローン技術により作出する。

 羊産業においては、総額1,980万豪ドル(約12億8,700万円)の予算で消費者に求
められる高品質の羊肉と羊毛の開発を目的とし、@動物福祉に配慮した実施と飼養
管理技術の開発、A遺伝子技術による細い線維と良質な肉の開発、B最新技術の実
行と収益性の向上、C大学における職業訓練コースの配置となっており、今後、産
業ごとに各テーマについて研究が実施されることとなる。

 また、その他の農林水産業部門では、小麦(1,700万豪ドル:約11億500円)およ
び水産(養殖)(1,650万豪ドル:約10億7千万円)について同様のCRCプロジ
ェクトが実施される。

 豪州の酪農乳業界は、昨年7月の酪農乳業改革により今もなお激しい動きを見せ
ている。数日前、ニューサウスウエールズ(NSW)州のノルコ乳業組合が原料乳
の買付けでNSW州のデイリーファーマーズとの競争に敗れ、原料乳の不足からノ
ルコ乳業組合の主力製品であり60年の歴史を持ったチーズ生産から撤退するとの報
道がなされたばかりである。酪農業から離脱する生産者も多いとされ、予想以上の
乳業改革の影響の大きさにトラス農林大臣の下、その影響調査が実施されている。
また、羊産業も昨年までの羊毛価格の低迷で厳しい経営をせざるを得ない。

 これら研究が実際の成果となって現れるのは、まだ先かもしれないが、それぞれ
の産業にとって前向きな話題であることには代わりはない。厳しい現状の酪農業、
羊産業の生産者にとって今後のCRCの研究成果が期待される。


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