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ブッシュ米新大統領、前政権下の規則見直しに着手



【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 1月25日発】1月20日、米国会議事堂にお
いて、ジョージ・W・ブッシュ氏の大統領就任式が行われ、新しい農務長官には、
元農務副長官のアン・ベネマン氏が正式に任命された(ベネマン氏のプロフィール
については、「畜産の情報(海外編)」2001年2月号のトピックス参照)。

 その興奮も覚めやらぬ中、ブッシュ新大統領は、クリントン前政権が任期終了間
際に公表した連邦規則をいったん棚上げし、その必要性などについて再検討を行う
よう、ホワイトハウスの補佐官を通じて関係省庁に指示したことが明らかになった。

 既報(1月16日号)の通り、年明け後も積み残し案件の処理に追われた前政権下
の米農務省(USDA)は、1月9日公表の家きん肉の水分残留を規制するための
最終規則に続いて、18日には小売段階などにおける食肉および家きん肉製品に関す
る栄養成分の表示義務化規則案を公表した。

 本規則案は、「米国民のための食生活ガイドライン2000」(昨年5月公表)の中
で示された脂肪摂取量などに関するアドバイスが適切に実践されるための、消費者
への情報提供という趣旨によるものであり、これまで表示義務の対象とされていた
ハム、ソーセージなどの加工品に加え、カット肉やひき肉といった単一原料を用い
た製品にも表示が義務付けられるというものである。表示項目は、カロリー(総量
および脂肪由来)、脂質(総量および飽和脂肪)、コレステロール、炭水化物、食
物繊維、糖分、たんぱく質およびビタミン・ミネラル類とされている。また、一定
の基準を満たす産品についてのみ使用が認められる「低脂肪」という表示の要件を
満たさない場合にあっても、赤身率を表示項目に含めることも認めている。

 さらに、グリックマン前農務長官は任期最終日の19日、近年顕在化しているリス
テリア菌による食中毒などの被害を食い止めるため、調理済みや半加工の食肉・家
きん肉製品の製造業者に対し、病原菌の検査義務を課す規則案を近く公表する予定
であることを明らかにした。これは、食品の安全性確保を重要な政策課題の1つと
して掲げていたクリントン前大統領が昨年5月、USDAに策定を指示していたも
のであり、@リステリア菌の抑制措置が適切に講じられているかを評価するため、
事業者に対して病原菌に関する環境検査を義務付けること、Aリステリア菌やサル
モネラ菌などについての安全性達成基準(performance standard)を設定し、事
業者がそれを順守しなければならないことなどが規定されるとしている。

 しかし、ブッシュ新大統領の指示内容によれば、原則として、@既に公布されて
いる規則で、まだ施行されていないものについては、60日間の一時的な施行延期措
置がとられるとともに、A今後公表が予定されている規則案についても、公表の差
し止めが求められている。このため、畜産関係では、上記3つの規則以外に、昨年
公布された食肉取引情報の報告義務化規則やオーガニック食品基準なども見直しの
対象になるものと考えられ、これら規則の制定を快しとしない関係団体等のロビー
活動が活発化することも予想される。ベネマン新長官の下、体制も改まるUSDA
が今後どのような判断を下すのか、関係者の注目を集めることは間違いないものと
みられる。


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