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マッシュルーム・チェックオフ違憲判決の波紋(米)



【ワシントン駐在員 樋口 英俊 6月27日発】米最高裁判所は6月25日、マッ
シュルームのチェックオフ制度に基づく取扱業者からの賦課金徴収について、違憲
判決を下した。同制度は、マッシュルーム取扱業者から徴収した資金をマッシュル
ームの消費拡大を目的とした一般的な広告などに利用するもので、同様の制度が牛
肉、豚肉、酪農製品、卵、果実、綿花などで実施されている。

 今回の裁判は、マッシュルームの取扱業者であるユナイテッド・フーズ社が、自
社商品との関係でこうした広告に反対を唱えている場合でも、賦課金の支払いが義
務付けられることは、憲法修正第1条に保障された表現の自由に反するとして、国
を相手取って起こした訴訟に端を発する。

 米最高裁判所は判決要旨の中で、政府が望む表現方法に対し、国民に資金を提供
するよう義務付けることが可能となれば、表現の自由が保障されなくなるとして、同
社の訴えを支持した。なお、米最高裁は97年に、カリフォルニア州における果樹作
物(桃、プラム、ネクタリンなど)の同様の制度については、合憲との判断を下して
いる。今回の判決では、果樹作物の場合、マーケティング・オーダー制度などの出
荷規制を含む包括的な措置の一環として、生産者が協調的なルールに基づき、一般
的な広告に賦課金を支出することに妥当性が見い出せるが、マッシュルームについ
ては、生産、出荷の決定に関する規制がないため、協調して行動する必要性もないと
いう両者の違いが強調された。

 ベネマン農務長官は今回の判決後、当該制度に関する対応策を練るため、判決内
容の検討に着手したことを明らかにした。また、同長官は、チェックオフ制度が引
き続き農産物の市場拡大に重要な役割を担っているとコメントしたが、個別農産物
のチェックオフ制度への言及は避けた。

 肉牛・牛肉部門のチェックオフ制度を担当する肉牛生産者牛肉振興調査ボード
(CBB)は声明の中で、判決内容を分析中であるとした上で、今回の判決と一線
を画すべく、@マッシュルームの賦課金は取扱業者が対象であることから、一般的
な広告よりも自社商品を広告することが好まれるが、牛肉の場合、主として生産者に
よって賦課金が支払われており、一般的な広告により、牛肉の需要が全体的に増加し、
各生産者が利益を得ることが可能であること、Aマッシュルーム業界と異なり、牛肉
業界は連邦政府による検査、格付けその他の規則の対象となっていることなど、マ
ッシュルームの制度などとの違いを挙げた。

 豚肉チェックオフ制度の廃止を求めて、米農務省に対して訴訟を起こしている
「家族農家のためのキャンペーン(CFF)」などの団体は、今回の最高裁判決が
マッシュルームと同様に広告に多くの資金が費やされている豚肉チェックオフ制度
などに与える影響は甚大としており、今後の運動に勢いが増していくものとみられ
る。


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