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口蹄疫問題によるアルゼンチンの動向



【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 7月11日発】アルゼンチン農畜産品衛
生事業団(SENASA)によると、今年3月12日にパンパ地域で口蹄疫の発生が
確認されてから6月30日までの総発生件数は1,641件に上っている。これを州別に見
ると、発生の中心であるブエノスアイレス州が1,133件、サンタフェ州が140件、エ
ントレリオス州が132件、ラパンパ州が105件などとなっている。

 SENASAでは、南部パタゴニア地域を除き、全牛群に対するワクチン接種を
実施している。第1回目のワクチン接種はほぼ終了したことから、第2回目のワク
チン接種を7月15 日から実施するとしている。

 同国における口蹄疫発生後、EU、米国、チリなど主要牛肉輸出市場のほとんど
が閉鎖されている。SENASAによると、2001年1〜5月における牛肉輸出量(製
品重量ベース)は、ヒルトン枠が前年同期比47.3%減の5,400トン、生鮮肉が51.1
%減の3万2千トン、同期間における輸出額(FOBベース)は、ヒルトン枠が61.1
%減の2,787万ドル(約35億1,200万円:1ドル=約126円)、生鮮肉が50.5%減の
7,285万ドル(約91億7,900万円)となった。

 海外市場で輸入停止措置が続く中、食肉輸出を行う食肉処理加工業者は、業務の
停止あるいは制限を余儀なくされている。こうした状況を踏まえ、6月1日付けで大
統領令732/2001号が発令され、口蹄疫に感受性のある家畜由来の食肉および内臓
を輸出する食肉処理加工業者に対する税制優遇措置がとられた。同措置によると、
99年1月に導入された推定最小所得税および金融機関からの借入金の利子に対する
租税が免税の対象となったほか、社会保障に対する雇用主負担分(一部を除く)を
付加価値税(IVA)の支払いに充当できることとなった。

 アルゼンチン牛肉業界では、輸出先として重要視するEUの牛肉等の輸入停止措
置解除が待ち望まれている。しかし、EUの家畜衛生調査団が4月末から5月上旬
にかけて実施したアルゼンチンにおける家畜衛生状況に関する調査結果について、
現地紙が6月下旬に伝えたところによると、同国で実施されている口蹄疫対策は十
分なものではないとした上で、EUによる解禁の条件としていくつかの勧告事項が
示された。同勧告の主な内容は次の通り。@牛群の原産地証明と衛生証明を明確化
するための有効的な家畜登録制度を実施すること、A口蹄疫発生状況の把握に必要
な信頼すべきデータを得るために発生源や感染拡大について調査を続けること、B
検体を世界口蹄疫リファレンス研究所である英国家畜研究所に送付し解析を行うこ
と、C牛以外の偶蹄類動物をワクチン接種の対象としない理由を説明すること、D
EU向けの全輸出認定施設において認定要件が満たされているか検査を実施するこ
と。

 これに対し、アルゼンチン農牧水産食糧庁の幹部筋は、EUの輸入停止措置解除
の時期について、口蹄疫が沈静化していない現状では、EUの家畜衛生調査団によ
る再調査の時期は定かでないものの、おおむね年内の解禁を予想している。こうし
た中で、現地有力誌によると、第2回目のワクチン接種により口蹄疫発生件数が大
幅に減少するとみられるが、ワクチン接種の実施が遅れ、家畜移動制限措置が徹底
されなければ、EUによる輸入停止措置がさらに長引く可能性もあるとみている。


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