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WTO、カナダの新乳価制度も輸出補助金と裁定



【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 7月12日発】世界貿易機関(WTO)紛争
処理小委員会(パネル)は7月5日、スペシャル・ミルク・クラス制度に代わるカ
ナダの新たな乳価制度についても、輸出補助金に該当するとの裁定を下した。

 スペシャル・ミルク・クラス制度とは、輸出向け乳製品製造用の生乳について、
国内向けよりも安価な乳価クラスを設定し、生産者にはこれらのプール乳価が支払
われるという仕組みである。しかし、99年10月にWTO協定違反との裁定を受け、
2000年末までに協定整合的な制度への変更を行うことが余儀なくされたことから、
2000年8月以降、各州単位による新しい輸出用生乳の価格制度が実施されていた。

 それまでは、供給管理(クォータ)制度の下、生乳が供給過剰となった場合にの
み、カナダ酪農委員会(CDC)が、輸出用の乳価クラスの下での取引を許可する
仕組みとなっていた。これに対し、新制度においては、輸出向けに取引される生乳
がクォータ制度の対象外とされ(CDCの許可制も廃止)、生産者と乳業者との間
の直接交渉によって取引を行うことが可能となった(ただし、ケベック州とオンタ
リオ州においては、「bulletin board(掲示板)」と呼ばれる単一の取引所での
取引に限定)。このため、カナダの政府や関係団体は、新制度に対する連邦・州政
府の介入は一切なく、価格は商業ベースで決定されるため、新しい乳価制度は、輸
出補助金には該当しないとの強気の立場を表明していた。

 しかし、申立国である米国とニュージーランドは、変更後の制度もWTOの裁定
に従っていないとして、今年2月9日にカナダとの協議を行ったが、これが不調に
終わったため、2月16日には、本件に関するパネル設置と併せて、両国とも3,500
万ドル(約43億8千万円:1ドル=125円)相当の対抗措置(カナダ産品に対する関
税引き上げ)の承認をWTOに要請した。その後の仲裁手続きによって、パネル
(または上級委員会)報告が採択されるまで、対抗措置の手続きは延期されること
となり、3月1日にはパネルが設置された。

 今回のパネル認定のポイントは、@政府のクォータ制度の外に置かれた輸出用の
生乳は、同制度下にある国内市場向けよりも低い価格で取引されており、また、こ
れを国内市場に仕向けることも制度的に禁止されていることなどから、農業協定第
9条1(c)の「輸出補助金」に該当する、Aこの制度による輸出用相当分を算入し
た場合の2000/01年度におけるチーズの補助金付き輸出数量(10,666トン)は、
譲許水準(9,076トン)を超えていることから、同協定第3条3および第8条の譲
許表違反にも該当するというものである。

 この裁定について、ベネマン米農務長官は7月11日、「WTOが米国の農業者を
不公正な貿易競争から守るものであることが証明された」とした上で、市場拡大と
輸出補助金の撤廃を図るためには、現在ブッシュ政権が獲得を目指している貿易促
進権限(TPA:ファスト・トラック権限と同義)の付与も不可欠である旨を併せ
て強調した。また、全国生乳生産者連盟(NMPF)をはじめとする米国の酪農・
乳業3団体も同日、今回のパネル裁定を歓迎する共同声明を発表した。

 一方、カナダのバンクリフ連邦農業・農産食料大臣は、「カナダは、WTOの下
での国際的義務を完全に果たしている」として、裁定への不満を表し、上訴する構
えであることを明らかにした。上級委員会の裁定は、申し立てから原則60日以内に
行われる。


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