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【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 7月17日発】国際協力事業団が国立ブ エノスアイレス大学農学部と協力して実施している「環境保全型家畜生産システム 研究協力プロジェクト」は99年から3年間の期間で実施されているが、同プロジェ クトは家畜生産と環境保全を調和させる今日的課題に取り組んだ研究協力として注 目を集め、その成果が同国の畜産業に応用されることが期待されている。 同プロジェクトの目的はアルゼンチン産牛肉の国際市場における輸出競争力の確 保と国内の環境保全との調和を目標として@アルゼンチン産牛肉の肉質改良と生産 性の向上A広大なパンパの草地を活用した環境負荷の少ない牛肉生産システムの体 系の確立である。 牛肉生産者の多くは、国際市場において優位性のある牛肉は筋肉内に一定の脂肪 を有する柔らかい牛肉にあるとの認識を持っており、広大な草地を利用した放牧肥 育が主体であった同国においても穀物を多給するフィードロットが増加しつつあり、 将来的には畜産環境問題を引き起こしかねない状況にある。 こうした中で、同プロジェクトは、アルゼンチンの牛肉生産は広大な草資源を有 効に活用し、放牧主体の肥育を行うことが環境への負荷を増大させない合理的な生 産システムであるとの基本的認識のもとに成り立っている。 同プロジェクトの研究課題は次のとおりであり、 @超音波診断による肉量・肉質の評価手法の開発、選抜育種への応用 A枝肉評価システムの構築 B放牧管理技術並びに穀物給与が育成および肥育期間中の肉牛の肉量や肉質に及 ぼす影響 C近赤外分光分析法による粗飼料成分の分析システムの確立 D放牧管理と飼料構成などの違いによる放牧肥育期間中の肉牛の成長・肥育シュ ミレーションモデルの開発 と、飼料穀物の給与はサプリメントとして、あくまで放牧肥育を主体とすることを 前提として構成されている。 実際にプロジェクトを担当しているブエノスアイレス大学農学部では、ヘルシー でエコロジカルなビーフ(エコビーフ)を生産するシステムとして、国際市場で評価 される一定水準の肉質を斉一性を含めて放牧肥育主体で達成するための選抜育種と、 肉質評価手法の確立に力点を置きたいと考えている。同プロジェクトはまだ終了し ていないが、アルゼンチンアンガス協会は同大学と協力して、協会が保有する種雄 牛の選抜に同プロジェクトによる成果を活用する等研究レベルから応用レベルに移 行しつつある。 口蹄疫発生で暗いニュースの続くアルゼンチンだが、一刻も早く口蹄疫が終息し、 このプロジェクトの成果が生かされることを願いたい。
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