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生体豚価格安定により国内生産が活発化か(ラオス)



【シンガポール駐在員 小林 誠 7月19日発】ラオス農林省畜水局によれば、
同国では、昨年、隣国タイにおけるチャロン・ポカパン(CP)グループなど大手に
よる豚の大量放出により、生体豚価格が大幅に下落し、国内の養豚が危機に瀕して
いたが、タイ側の動きが落ち着きを取り戻したことから、今年中盤に入って回復基
調に転じている。同局は、畜産を北部諸県の貧困および環境保護対策の柱にしたい
としており、生体豚市場の安定による養豚の活発化を期待している。

 同国の国土面積23万7千平方キロの54%は森林であるが、森林の伐採・焼畑によ
る荒地が40%あり、環境保護対策が急がれている。国民の8割は農業に従事してお
り、GDPに占める農業の割合は5割程度である。同国は、86年にベトナムのドイモイ
(刷新)政策と同様の地方分権と民営化を中心とする政策に移行し、96年までの間、
年率7%以上の経済成長を遂げてきた。しかし、この経済成長はタイへの輸出に支
えられたものであったため、97年末のタイの通貨危機により同国の経済も一気に落
ち込んだ。畜産は、農業GDPの4割を占めており、林業が衰退する中にあって、同国
経済における重要な存在となっている。同国の家畜頭羽数は、2000年末現在で、水
牛が約103万頭、牛が約110万頭、山羊・羊が約12万頭、豚が約143万頭、鶏が約1,3
09万羽となっている。

 同国では、肉畜や食肉には30%、種畜には1%の関税を課しているが、中国、ベ
トナム、カンボジア、ミャンマー、タイの5ヵ国に囲まれた内陸国で国境線が長い
ことから、必ずしも十分な輸出入管理が行えない面がある。また、全人口約550万
人の約15%に相当する約80万人の人口を有する首都ビエンチャンの公式の豚と畜頭
数が1日当たり120頭(平均生体重70s)程度しかないことから、相当数の非公認と
畜が行われていると推定される。このため、価格政策は十分に機能していないと考
えられ、同国の肉豚生産者価格は、周辺国でも最大の輸出余力を有するタイの市況
に左右される面が大きい。

 こうした中で、同国では、公営と畜場による豚の買い入れ価格を生体1s当たり9
千キップ(約120円:100キップ=約1.33円)、売り渡し価格を枝肉1s当たり1万2
千キップ(約160円)と定めている。同国最大で種雌豚約1,100頭を飼養しているバ
ニット農場によれば、公定買入価格の9千キップは、農家にとって損益分岐点であ
るという。

 昨年は、タイの市況が大幅に下落したことの影響により、ラオス国内の肉豚生産
者価格も20%以上下落、生体1s当たり8千キップ(約106円)程度となり、肥育農
家の採算が取れなくなった。このため、それまで月間500頭程度出荷していたバニ
ット農場の子豚の出荷頭数がほぼゼロになる事態が生じていた。しかし、今年に入
ってからタイの市況が持ち直し、ラオスの市況も9千キップ程度まで回復している。

 同国の北部山岳地帯は貧困であり、自家用の食料生産すら満足にできない状況の
中で、住民による無計画な焼畑農業により荒地が拡大している。このため、この地
帯に養豚などを導入して、住民の収入の確保と、定着化を図って、貧困対策と環境
保護対策を一挙に達成しようとしている。しかし、生産物を流通させるための道路
インフラなどが未整備であり、技術普及などに必要な資金も不足していることから、
遅々として進展していない。

 同局では、豚の市況が収益水準に安定したことで、国内生産の活発化につながる
ことを期待している。


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