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米下院農業委員長、次期農業法の素案を公表



【ワシントン駐在員 樋口 英俊 7月17日発】米下院農業委員会のコンベスト
委員長(共和党、テキサス州)および同委員会の少数党リーダーであるステンホル
ム議員(民主党、テキサス州)は7月12日、次期農業法の議論のたたき台となる素
案(コンセプト・ペーパー)を公表した。この中で、作物計画については、現農業法
で実現され、生産者からの評価も高い作付け自由化や、農家直接支払い制度を維持
することとしている。農家直接支払い制度に基づく固定支払い額は、現農業法の最
終年度である2002年度水準での据え置きが提案されている。

 また、大豆などの油糧種子作物についても、作物計画への追加が提案されており、
実現すれば、現農業法に基づく価格支持融資制度に加え、農家直接支払い制度など
の新たな適用対象となる。ただし、ローンレートの単価は、従来の作物が現行水準
での据え置きとなっている一方で、油糧種子作物は引き下げられることとされてお
り、例えば大豆の場合、2001年のレートに比べて6.5%安の4.92ドル/ブッシェル
(約22,610円/トン:1ドル=125円)に設定されている。

 さらに、価格変動を相殺する形での生産者所得に対するセーフティネットとして、
現農業法制定時に廃止された、目標価格に基づく支払い制度の復活も提案された。
目標価格については、新たに作物計画に加えられた作物を除き、95年の価格水準に設
定することとされており、支払額(単価)は、目標価格から、生産者受取価格(12
ヵ月全国平均)あるいはローンレート(全国平均)のいずれか高い方の額と農家直接
支払い制度に基づく固定支払額の合計を差し引いた額となる。

 畜産団体をはじめとして、生産者からの要望の強い環境保全事業の拡充について
は、土壌保全留保事業(CRP)の対象面積の拡大、環境改善奨励事業(EQIP)
の増額など、現状の予算の大幅な増加が提案された。また、輸出政策として、市場
アクセス計画(MAP)予算の倍増、輸出奨励計画(EEP)、乳製品輸出奨励計
画(DEIP)、海外市場開発計画(FMDP)の継続なども含まれている。

 酪農については、加工原料乳の価格支持制度を、現行の買い上げ価格である9.90
ドル/100ポンド(約27円/kg)で継続することが提案されている。同制度は現農業法
で2000年1月1日以降の廃止が規定されていたにもかかわらず、生乳生産者団体で
ある全国生乳生産者連盟(NMPF)の反対などにより、農業関連予算法などに基
づく延長が図られてきたもので、NMPFはこの提案を強く歓迎する声明を発表し
た。

 ベネマン農務長官は今回の素案の発表について、「重要な第一歩であり、生産者
や一般国民のニーズに対する真剣な対応」と述べる一方で米農務省(USDA)で
も近日中に次期農業法に関する考え方を明らかにし、今後の議論に積極的に関与し
ていく姿勢を示した。

 コンベスト委員長は、この案に基づく集中的な公聴会、討議を経て、8月2日の
夏季休会入りまでには、同委員会での最終的な法案の詰め(markup)を終えたいとし
ているが、目標価格に基づく支払い制度など、世界貿易機関(WTO)協定との整
合性、米国農業の競争力維持などの面で懸念の声も上がっており今後の紆余(うよ)
曲折は想像に難くない。


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