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【ブラッセル駐在員 山田 理 5月31日発】EU委員会が先般公表した牛肉市 場動向に関する資料によると、5月時点のEUの牛肉消費量(推計値)は、昨年11 月に再燃した牛海綿状脳症(BSE)問題以前の消費水準と比較すると10%減の水 準まで回復した。依然、通常の消費水準を下回っているものの、3月(23%減)お よび4月時点(18%減)と比べて顕著に回復した。 EUの牛肉消費(BSE問題再燃前の水準との比較) (単位:%)
3月 | 4月 | 5月 | |
ベルギー | − | ▲ 5 | ▲ 5 |
ドイツ | − | ▲40 | ▲20 |
ギリシャ | − | ▲25 | ▲15 |
スペイン | − | ▲20 | ▲10 |
フランス | − | ▲20 | ▲10 |
イタリア | − | ▲30 | ▲15 |
ポルトガル | − | ▲20 | ▲15 |
フィンランド | − | ▲ 2 | 0 |
スウェーデン | − | ▲ 3 | ▲ 3 |
EU15ヵ国 | ▲23 | ▲18 | ▲10 |
資料:EU委員会(5月18日の牛肉管理委員会から) 注:ルクセンブルグを除き、上記以外の国ではBSEの影響による牛肉消費減少の 報告なし 国別に見ると、昨年末から今年初めにかけてBSEの発生が初めて確認され、消 費が激減していたドイツ、スペイン、イタリアでも、徐々に消費者が牛肉に戻りつ つある。また、今回のBSE問題再燃のきっかけとなったフランスでの牛肉消費は、 すでにEU全体と同じ10%減の水準にまで回復している。 成牛価格については、2001年5月初旬(第19週)とBSE問題再燃前の2000年10 月末(第42週)とを比較すると、若齢雄牛で18.7%安、経産牛で24.9%安と低い水 準にとどまっている。しかし、経産牛に比較して、牛肉消費の中心である若齢雄牛 などは回復の兆しが見られる。 今後、@牛肉の域内消費の回復に加えて、A口蹄疫の沈静化により家畜の移動制 限が解除されたことで、牛肉などの域内流通が活発化することが見込まれており、 成牛市況の回復にプラス要因として働くことが期待されている。 さらに、EU産牛肉の最大の輸出先であるロシアがEU産牛肉輸入禁止の部分的 解除(イギリス、アイルランド、フランス、オランダ、ベルギーなどを除く)に踏 み切るなど、BSEや口蹄疫により閉ざされていた域外市場が徐々に開かれつつあ る。 しかし、成牛価格下げ止まりの最大の要因は、EUによる介入買い入れや廃棄計 画などの供給制限にほかならない。2001年1月からの4ヵ月間で、約18万5千トン が介入在庫となり、約20万トンが廃棄された。このほかイギリスでの口蹄疫の大発 生による殺処分により、約9万トン相当の牛肉生産が減少したとみられている。こ の結果、合計で47万5千トンの牛肉が市場から排除・隔離されたが、これはEUの 年間牛肉消費量の約6%に相当する。 長期的に見ても、域内の牛肉消費が従来のレベルにまでに回復することは考えに くいこともあり、牛肉需給のバランスを保つためのさらなる対策が必要であるとし て、EU委員会では7項目からなる緊急対策(7ポイントプラン:海外駐在員情報 第474号参照)の実施に向けて、各加盟国への働きかけを強めている。
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