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望まれるトウモロコシの安定的確保(インドネシア)



【シンガポール駐在員 宮本 敏行 5月31日発】インドネシア政府は先ごろ、
口蹄疫の侵入を阻む手段の一環として、現在、口蹄疫の発生が見られる欧州および
アルゼンチンからの飼料穀物の輸入を禁止した。併せて、加熱処理されていない中
国産トウモロコシについても、同様の措置が取られた。

 畜産物の需要増大に伴い、同国が輸入する飼料用トウモロコシの数量は増加傾向
にある。インドネシア中央統計局によると、99年10月〜2000年9月の間に91万トン
が輸入され、その内訳は、中国産が70万トン、米国産が17万7千トン、アルゼンチ
ン産が3万1千トンとなっている。在インドネシア米国大使館は、アルゼンチン産
や中国産の輸入が制限されることで、今後は米国産の輸入シェアが大きく伸びると
の見解を示している。

 インドネシアの伝統的な料理であるナシ・アヤム(鶏肉を添えた焼き飯)などに
代表されるように、同国で最も国民に親しまれている食肉は鶏肉である。貿易省に
よると、昨年、養鶏業で飼料として消費されたトウモロコシは250万トンで、その
うちの多くは輸入品である。鶏肉消費量も年々増加しており、インドネシア養鶏協
会によると、今年の家きん生産は、前年比23%増の8億羽に上ると予測されている。

 しかし、一部のエコノミストは、禁輸などで飼料用トウモロコシの手当てが十分
にできなくなると予測されることから、同国は今後、トウモロコシとともに一定量
の鶏肉輸入も行う必要があると指摘している。同国は昨年末、米国産鶏肉の輸入を、
「ハラール(イスラム教の教義にのっとり製造された食料品)」の順守が疑わしい
として禁止したが、これは、大量に流入する安価な米国産もも肉に対抗するための
措置とも言われている。インドネシア養鶏協会によると、米国では、米国民が好む
むね肉の価格が1kg当たり2.7ドル(約324円:1ドル=120円)であるのに対し、
需要が弱いもも肉は0.5ドル(約60円)と5倍以上の開きがある。このため、米国
はむね肉に利益を転嫁することができ、もも肉を安価で輸出することが可能として
いる。こうしたことから、同協会は政府に対し、米国産鶏肉の輸入禁止措置の継続
を訴えるとともに、同国同様、安価な米国産鶏肉の輸入増加にあえぐタイ、フィリ
ピンおよびマレーシアとの4ヵ国で構成するアセアン鶏肉生産者連合全体で、米国
産鶏肉の流入阻止を図っていく動きを強めている。

 一方、インドネシアの輸入制限は、タイのトウモロコシ輸出にも思いがけない好
機をもたらしている。タイのトウモロコシの年間生産量は約450万トンで、国内需
要とほぼ均衡していることから、本来、輸出余力は乏しいといわれる。しかし、あ
る大手農産物輸出会社によると、タイの今年のトウモロコシは豊作と予測されてお
り、同国の輸出意欲は高まっているとされる。昨年、タイのトウモロコシ輸出量は
約2万トンであったが、同社によると、今年はすでに7万5千トンの売買が成約し
たという。

 インドネシアでは現在、大統領の弾劾問題による政局の混迷化などで社会不安が
増大しつつあり、食肉をはじめとする食料の不足は、これに一層拍車をかける恐れ
がある。トウモロコシは、国民にとって最も重要な食肉である鶏肉生産を支える飼
料原料でもあり、その安定的な確保が望まれている。


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