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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 6月7日発】EU委員会フィシュラー委員(農 業・農村開発・漁業担当)およびバーン委員(保健・消費者保護担当)は、スウェ ーデン(5月28日:ストックホルム)、アイルランド(5月31日:ダブリン)、ド イツ(6月7日:ベルリン)において、消費者、農家、食品・小売業界および有識 者の代表と農業、食品に関する意見交換を行った。 この意見交換会は、両委員が共同で企画したもので、来年の共通農業政策(CA P)中間見直しを控え、食品および農業の将来についての議論を政治家と専門家の みにとどめずに、広く関係者から意見を募ることとした。今後、ほかの国でも同様 の意見交換会が予定されている。 主要議題としては次のような事項が挙がっている。 ・ 現代の農業生産に何が期待されているか。それに対し、EUの政策はどのよう に支援できるか。 ・ 農業とほかの産業との違いは何か。 ・ ヨーロッパ農業モデルはさらに多様化すべきか。 ・ 経済的、環境的、社会的に見て、農業の持続を図るにはどうしたらよいか。 ・ 農業分野が国際的に競争力を持ちかつ高品質な食品を生産するにはどうしたら よいか。 ・ 高品質な食品の特質は何か。品質と価格はどう関係しているか。 ・ 食品小売業界は食品の安全・品質についての消費者の要望を満足させているか。 スウェーデンにおける開催に当たり、フィシュラー委員は、実質的なCAP改革 はすでに実行されていることを強調しつつ、多様な意見を歓迎する旨次のよう語っ た。 EUでは、農業と食品は大きな課題であり、市民にとっても大きな関心事項であ る。市民は量、安全のみならず品質についても強く求めている。市民は生産方法、 おいしさ、健康、自然に関する品質を求めている。 戦後の古い農業政策は食品の供給を確保するという点では十分成功した。しかし、 その成功は持続可能な農業と引き換えに得られたものである。殺虫剤と人工肥料は 作物生産を増やしたが、水質汚染も引き起こした。大きな機械の使用により、生け 垣や林地は失われ、ヨーロッパ各地の農村風景が変化した。反すう動物には、より 早く肥育する目的で、ほかの反すう動物の加工残さ(肉骨粉)が与えられた。農業 保護は需要以上のものとなったが、農業の集約化はその後も70〜80年代まで続いた。 90年代からアジェンダ2000までの農業改革では姿勢を転換した。価格支持を直接 支払いと家畜奨励金に移行し、粗放的農業を奨励した。現在では予算の7割が農家 に直接支払われており、農村開発政策は持続可能な農業指向のために必須な構成要 素となっている。また、食物連鎖を一掃するための厳格な措置(肉骨粉飼料の禁止) をとることとした。 CAPの中間見直しでは酪農、穀物をはじめとする多くの政策の再検討が予定さ れている。 持続可能な農業については、19世紀の農法に帰ることまたはすき間市場を作るこ とと混同してはならないと考えている。我々は改革を受け入れる必要がある。土地 利用、経済的に実行可能という観点からの持続可能な農業形態の開発には、研究と 大学が重要な役割を持っている。我々は、農業の持続可能性が非良心的な生産者・ 流通業者の新たな金づるになってきていることにも注意しなければならない。我々 は、質の良い農産物が確実に生産・販売されるための枠組みを提供しなければなら ない。本日の意見交換では、農業は需要志向であること、責任ある農業は経済的、 環境的、社会的に見て持続可能でなくてはならないことを心にとめてほしい。
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