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【シンガポール駐在員 小林 誠 6月7日発】フィリピン南部のミンダナオ島を 中心とする地域が、5月27日〜6月1日にパリで開催された国際獣疫事務局(OI E)の第69回総会において、口蹄疫のワクチン不接種清浄地域に認定された。今回 の決定により、同国では、畜産物生産余力のあるミンダナオ島などから、他の清浄 国への輸出も可能になるとして、畜産物の輸出振興に対する期待が高まっている。 OIEは、97年の第64回総会において、口蹄疫のワクチン接種清浄国および非清 浄国について、国際家畜衛生規則に定める一定の基準を満たした旨が報告されて総 会の承認があれば、ワクチン不接種清浄国として認定できることを定めた。今回の ミンダナオ島に関する認定は、この決定を受けたフィリピン政府からの、昨年8月 25日の申請に基づいて行われたものである。東南アジア諸国における口蹄疫清浄国 ・地域の認定は、全国単位で不接種清浄国となっているインドネシアとシンガポー ルに続き、3番目となる。 フィリピンは、7千以上の島で構成される島国であり、北から順にルソン、ビサ ヤ、ミンダナオの3地域に分けられている。同国は、島国であるため、比較的疾病 のコントロールが容易であると見られがちだが、島と島が近い分、監視の抜け道も 多く、農業省ではミンダナオ島を中心とする地域の口蹄疫清浄化維持に細心の注意 を払っている。 ミンダナオに隣接するビサヤ地域も、ミンダナオと同じ時期に申請書を提出する 予定であったが、99年11月に肉牛のフィードロットを多く抱えていたイロイロ市で 口蹄疫が発生したため、申請が見送られた。大消費地である首都マニラを抱える北 部のルソン地域では、95年から豪州の協力による口蹄疫撲滅計画が進められており、 2003年を清浄化の目途としている。しかし、同地域の場合、ワクチン接種による清 浄化であるため、仮に清浄化が達成されても、ミンダナオ地域と同様のステータス は与えられないことになる。 ミンダナオ島では、豚肉の島内需要量が、20万〜25万トン程度と見込まれている のに対し、年間生産量は、国内生産量の約29%に相当する約35万トンとなっており、 90年代中盤以降、豚肉の余剰が続いている。同島の豚飼養頭数は約320万頭であり、 約3分の1は同島南部にある国内第2の都市であるダバオ市周辺で飼養されている。 同島民の年間1人当たりの豚肉消費量は11.8sであり、全国平均の15.9sよりかな り低いものとなっている。同島は、台風の被害がほとんどない地域として知られて おり、飼料用トウモロコシの生産が比較的安定していることから、飼料コストが安 いという利点がある。 このようなことから、政府は、ミンダナオ島の畜産物、特に豚肉の余剰生産分を 輸出に向けたいとしており、今回のワクチン不接種清浄地域認定を弾みにしたいと している。 ただし、日本は、家畜伝染病予防法施行規則で偶蹄類動物とその肉などの輸入禁 止地域などを区分しており、これによると、以前から口蹄疫フリーの認定を受けて いるシンガポール、インドネシアともに加熱処理されていない肉などの輸入は禁止 されている。輸出入については、その他の衛生条件なども加味して、当時国間の合 意に基づくものであり、口蹄疫フリーの認定が輸入解禁に直結するとのフィリピン 側の思惑は期待はずれに終わる可能性も高い。
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