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【シドニー駐在員 幸田 太 6月14日発】ニュージーランド(NZ)農林省は 先ごろ、北島南部、南島ほぼ全域を中心に昨年12月から今年5月まで5ヵ月間にわ たって続いた干ばつの農畜産業への影響を推計した。これによると、酪農、肉牛、 羊、シカ、園芸作物への干ばつによる被害額は、各産業合計で3億1,800万NZド ル(約159億円:1NZドル=50円)に達するとみられている。 今回の干ばつは、南島の東海岸地域のオタゴ、カンタベリー、北部地域のマルボ ロー、ネルソン、北島の南部地域のウェリントン、マナワツを中心とした被害が確 認されている。最も干ばつ被害が深刻な地域はカンタベリーで、1954年にも116日 間の干ばつが記録されているが、今回はそれを上回る131日間を記録した。また同 地域では、河川の流水量が減少し、かんがい用水に対する取水制限が設けられるな どした。 被害額を畜種別に見ると、羊部門への影響が一番大きかった。干ばつの影響を受 けた6地域合計では約2,740万3千頭の羊(NZ国内の飼養頭数の約60%)が飼養 されており、生産高が1億7,400万NZドル(約87億円)減少したと推計されてい る。平年であれば、自らの草地で確保できる繁殖雌羊用の牧草を、今秋は確保がで きず、外部からの購入に頼らなければならなかったため、繁殖にも影響が出たとさ れている。次いで、被害額が大きいのは肉牛部門で、同地域合計で約185万頭(同 飼養頭数の約39%)が飼養されており、被害額は7,800万NZドル(約39億円)と されている。羊・肉牛生産は酪農業等と比較すると、かんがい設備等が未整備で生 産性の高くない土地を利用して行われている場合が多く、天候が生産に与える影響 も大きい。 一方、酪農部門は、今回の干ばつの影響を受けた6地域合計で約93万頭の経産牛 (同飼養頭数の約22%)が飼養されているが、その被害額は2,900万NZドル(約 14億5千万円)と推計された。マルボロー地域では生乳生産が前年比10%以上減少 し、キウイ酪農協は干ばつの影響を重く見てこの地域の購入単価を他地域より20% ほど上積みする措置を行うと発表した。しかしながら、NZ全体で見てみると、20 00/01年度(7〜6月)5月までの生乳生産量は過去最高であった昨年度の1,148万 キロリットルを超え1,200万キロリットルに達するとされている。このように好調 なのは、干ばつの影響を受けた地域以外が非常に好調で生産量も伸びたためであり、 昨年に続き今年も生乳生産記録を更新するとみられている。 また、今回の干ばつの被害を受けた地域では、2000/01年度の生産への影響にと どまらず、7月以降に始まるスプリングフラッシュといわれている牧草の成長と20 01/02年度の生産にも影響を及ぼすことが懸念されている。また、周年放牧型の肉 牛、羊、乳牛が妊娠中に受けたストレスがどのように出産等に影響を及ぼすか懸念 する生産者も少なくない。 NZの農業は、豪州などと比較して湿潤な気候と肥よくな土地を生かした低コス ト生産を行っている。言い換えれば自然の環境をうまく生かしたものであるが、ひ とたびそのバランスが崩れれば、自然環境に依存している部分が大きいだけに影響 は甚大となる。
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