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香港向けを中心に高まる豚肉の輸出意欲(タイ)



【シンガポール駐在員 宮本 敏行 6月14日発】チャロン・ポカパン・フーズ
社をはじめとするタイの豚肉輸出業者は、鳥インフルエンザの影響で住民の鶏肉離
れが進んでいる香港を中心に、諸外国への豚肉の輸出増を狙っている。

 香港では、当局が鳥インフルエンザのまん延を防止する目的で120万羽の鶏をと
う汰して以来、消費者のし好は、本来、中華系住民が最も好む豚肉へシフトしてお
り、豚肉の輸入量も増加傾向にあるといわれる。香港が輸入する豚肉の9割が中国
産、残りの1割がタイ産である。香港におけるタイ産豚肉の需要が増大したことを
受け、香港向けの輸出価格は大幅に上昇していると報じられている。  

 2000年におけるタイ産豚肉の輸出量は8,900トンと、国内の豚肉消費量約76万ト
ンの約1%にすぎず、仕向け先は、香港、中国のほか、マレーシア、カンボジアな
どに限られている。しかし、タイ農業協同組合省畜産局衛生課は、香港を舞台とし
て、鶏肉だけでなく豚肉の分野でも中国との競合が生じている中で、輸出向けの豚
および豚肉については、20養豚農場、4食肉加工場を認定しており、政府がワクチ
ンの接種状況や有害薬物の残留の確認作業などを行っていることから、タイ産豚肉
は品質や安全性の面で中国産に勝る評価を受けているとして、今年の香港向け輸出
はかなりの増加が見込めると自信を見せている。

 さらに、タイの豚肉輸出業者は、近年、マレーシアのウィルス性脳炎や台湾の口
蹄疫の発生、インドネシアにおける社会混乱などの要因で、近隣諸国において豚の
生産にブレーキがかかる傾向が見られるとして、豚肉輸出拡大の機会を模索し始め
ている。特に、国内最大の畜産総合企業であるチャロン・ポカパン・フーズ社は現
在、総収益の4割を占める輸出収益を、向こう2年間で5割に引き上げることを計
画しており、今後は鶏肉やエビなど従来の主力品目に加えて、豚肉の輸出拡大にも
取り組んでいきたいとしている。

 一方、タイの養豚業界では、政府が輸出用豚肉のみに課しているのと同等の品質
や安全性をすべての国産豚・豚肉に求めるなど、輸入豚肉との競合の見地から国産
の豚の品質を向上させる必要性が叫ばれ始めている。アセアン諸国は現在、域内関
税を最終的に0〜5%に引き下げる共通特恵関税計画などを柱とするアセアン自由
貿易圏(AFTA)構想の準備を進めているが、これが実現すれば、国産豚肉は価
格だけではなく、品質の面でも外国産との競合を強いられることとなる。こうした
観点からも、国産豚肉の競争力の強化が望まれている。

 タイでは、宗教上の制約もないことから、養豚産業の成長の可能性はかなり高い
といわれる。今後の養豚産業の発展には、輸出の拡大と併せて、口蹄疫をはじめと
した疾病のコントロールおよび国内消費の増加がカギになるものと思われる。


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