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【ワシントン駐在員 樋口 英俊 6月12日発】米農務省(USDA)は先ごろ、 腸管出血性大腸菌O157、O157以外の腸管出血性大腸菌(STEC:Shiga Toxic E.Coli)、リステリア菌、サルモネラ菌およびカンピロバクター菌による2000年の 食中毒の被害額について、約69億ドル(約8,280億円:1ドル=120円)との推計額 を発表した。 これによれば、サルモネラ菌に由来する食中毒患者は約134万人、うち入院患者 が約1万6千人、死者が553名であった。この結果、サルモネラ菌による被害額が 最も大きく、約24億ドル(約2,880億円)と推計されている。リステリア菌につい ては、患者数自体はサルモネラ菌の0.2%に満たないものの、死者が499名とこれに 次ぐことから、被害額も約23億ドル(約2,760億円)で2番目に大きくなっている。 患者数が最多の196万人であったカンピロバクター菌による食中毒の被害額が約 12億ドル(1,440億円)とリステリア菌に続き、以下O157(約7億ドル=約840億 円)、STEC(約3億ドル=約360億円)となっている。 この推計は、米保健社会福祉省疾病予防管理センターや米労働省などの統計に基 づき、医療費などの直接的な経費に加えて、休職や早世などによる損失額なども考 慮されている。また、カンピロバクター菌はギランバレー症候群、O157について は溶血性尿毒症症候群などの慢性的な合併症を引き起こす可能性もあることから、 これらに係る被害額も推計に含まれている。 今回公表された被害額については、今後の食品安全性に係る規制の費用対効果を 論じる際の検討材料の1つとして利用されるものとみられる。 USDAは食品安全性向上のため、さまざまな取り組みを行っているが、6月7 日には、ゲノム研究所との共同研究で、リステリア菌の遺伝子構造に関する新たな 情報を入手したことを明らかにした。USDAは今後、解明した個々のゲノムの断 片をリステリア菌全体のゲノムマップとして配列を決定していくことになるとして いる。 ゲノムマップに関する情報は、この菌が家畜や食品などにどのように生息してい るか、また、いかに人間に影響を与えるかといったことに関する理解を深めるもの である。このため、USDA食品安全検査局(FSIS)は、こうした情報が、加 工食品などの食品安全性に関する規則の策定やその運用上、重要であるとしている。 また、食中毒防止の一環として、FSISは今年の父の日には、ネクタイやシャ ツなどの代わりに、食品温度計を贈ろうと呼びかけている。この中では、食品のギ フトに使い捨ての温度計を加えることや、温度計付きのフォークやバーベキュート ングをプレゼントすることなどが提案されている。
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