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【ブエノスアイレス駐在員 浅木仁志 2月28日】2000年8月の口蹄疫問題以降、 アルゼンチンは防疫対策を強化してきた。 しかし同国の家畜衛生当局は、同国が口蹄疫ワクチン不接種清浄国の衛生ステー タスを維持するためには、リスク分析結果に基づき口蹄疫の感染と拡大のリスクを 最小限に抑え、自国と周辺国のリスク要因に変化が現れるまで新たな家畜防疫管理 システムを導入する必要があるとして、家畜衛生予防計画を作成し国際獣疫事務局 (OIE)に2月21日に提出した。報告を受けたOIEは、その計画内容を従来の 口蹄疫撲滅対策の戦略変更とし、アルゼンチンが2000年5月に得た口蹄疫ワクチン 不接種清浄国の衛生ステータスを一時的に留保した。 同計画は家畜移動に伴う追跡管理システムの強化、国内ゾーニングと各ゾーンで の具体的な防疫対策を内容としている。基本的な考えは、OIEの口蹄疫に関する コードにあるワクチン接種口蹄疫フリーゾーンを設置し、翻ってワクチン不接種フ リーゾーンを確保することで衛生ステータス留保に伴う影響を最小限に押さえると いうもの。同計画では国内を「国境監視ゾーン」、「国境緩衝ゾーン」、「制限ゾ ーン」、「監視ゾーン」、「ワクチン不接種フリーゾーン」の5ゾーンに分ける。 制限ゾーンは国境緩衝ゾーンで生産される子牛の約9割を搬入する伝統的な肥育地 帯で、主にブエノスアイレス、コルドバ、ラパンパの各州の一部を含むパンパ肥育 地域の中心である。制限ゾーンと国境緩衝ゾーンはワクチン接種フリーゾーンの下 に置かれ、ワクチン接種が実施される。この措置で最大1,500万頭の牛にワクチン 接種が必要といわれ、90年代、ワクチン接種活動で活躍した生産者による財団組織 の復活が決められた。なお、今回のワクチン接種について、家畜衛生当局は国内の 口蹄疫発生の事実は否定している。 アルゼンチン農畜産品衛生事業団(セナサ)の総裁、副総裁は今回の予防計画説 明のために2月の下旬にNAFTA、メルコスル諸国を行脚している。本音はワク チン接種を認め、かつ輸入に制限をかけないという了解を取り付けたいところにあ るようだ。 ブラジルは2月21日以降、アルゼンチンからの生体牛、骨付き生鮮肉、精液や受 精卵などの輸入を禁止し、輸入を骨なし生鮮肉と摂氏72度以上で処理した加工肉に 制限した。この輸入規制はアルゼンチン政府との協議の結果であり、OIEが最終 判断を下すまでといわれている。 また、最終的には現地調査によるとしながらも米国、カナダはアルゼンチンが予 防計画の措置を取った後も現行の衛生規制にのっとり輸入を継続するとしている。
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