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【ブラッセル駐在員 山田 理 3月1日発】ブラッセルで2月26日に開催され たEU農相理事会において、7項目からなる牛肉価格対策に関するEU委員会提案 などについての協議が行われた。この提案をめぐって加盟国間で意見が対立し、合 意に至らないまま、理事会は27日未明混乱のうちに終了した。 EU委員会の7項目の提案は、牛海綿状脳症(BSE)の影響による牛肉消費減 退がもたらした牛肉価格暴落に対処するための牛肉生産抑制策が中心となっている。 その概要は、以下の通り。 @オーガニック農業の振興 耕種作物の生産者に対する直接支払い制度の要件であるセット・アサイド(休耕 地など)の対象として、オーガニック農家の飼料生産活用を含める。 A粗放的生産の振興 特別奨励金および繁殖雌牛奨励金の交付要件となる飼養密度の上限を、飼料畑1 ヘクタール当たり2家畜単位(LU)以下から1.8LU以下に引き下げる。 B特別奨励金の交付限度頭数の設定 加盟国の裁量で変更または設定しないことが可能であった農家1戸当たりの交付 上限頭数を90頭とする。 C特別買上計画(Special purchase scheme)の導入 現行の30ヵ月齢以上の牛の牛肉廃棄計画に代わり、全頭のBSE検査を前提とし て、廃棄だけでなく牛肉を保管する場合も対象とする新たな買上制度を導入する。 D個人別の奨励金受給権の導入 過去の奨励金受給実績等を勘案し、個人別の奨励金受給権を導入するとともに、 全体枠を削減する。 E繁殖雌牛奨励金の交付要件の変更による生産抑制 申請数に含めることができる未経産牛の割合を、20%以下から20%以上40%以下 に変更する。 F通常介入買上の限度数量の適用停止 コスト高のセーフティーネット買上を回避するため、通常買上げの限度数量(年 間35万トン)を2001年および2002年については適用しない。 この提案のうち、特にCの特別買上計画の導入をめぐって加盟国間で意見が対立 した。EU委員会は予算効率の観点から現行の牛肉廃棄計画の実施を強く加盟国に 求めている。しかし、実際に同計画を実施しているのは、フランス、アイルランド など一部の加盟国に限られている。多数の牛をと畜し、廃棄することに対しては、 動物愛護の問題もあり、批判の声が挙がっている。EU委員会は、同計画への取り 組みを広げるため、対象を廃棄だけでなく保管にも広げる提案を行ったものとみら れる。ドイツはこの提案に賛意を示したが、フランス、スペイン、アイルランドな どは、牛肉に対する消費者の信頼回復には、現行計画の維持とEU規模での実施が 必要であると主張し、強く反対した。 このほか、通常介入買上の限度数量の適用停止でも意見の対立が見られるなど、 長時間にわたる協議でも一致点を見いだせず、最終的に7項目の提案は否決された。 同提案は、特別農業委員会(SCA)に差し戻され、協議は次回以降の農相理事会 に持ち越されることとなる。 なお、その他の事項については、@遺伝子組み換え(GM)作物を含む家畜飼料 の表示に関する規則の早期設定およびAスクレイピーやBSEに関する羊のモニタ リング強化について合意された。
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