ALIC/WEEKLY


農業・資源観測会議(Outlook2001)開催(豪州)



【シドニー駐在員 幸田 太 3月1日発】2月27日〜3月1日に開催された豪
州農業資源経済開発局(ABARE)による年次農業・資源観測会議(Outlook2001)
では、肉牛産業、酪農産業ともに成長との見通しが発表された。この会議は、毎年
この時期に開催されており、経済情勢、政策、気象条件などを総合的に分析し、主
要産品別に、国際需給や貿易動向について今後5ヵ年程度の短中期的な予測を行う
ものである。

 今回は、産業別の50項目のテーマについて、発表が行われた。総勢500人を超え
る参加者は、政府、業界団体、企業、ジャーナリストと多彩で国内外を問わずその
注目度は高い。

 2001年の豪州全体の経済展望は、米国をはじめ世界経済の減速による商品需要の
鈍化により伸び悩むとみられている。しかし、農産物については世界の供給量が落
ちるためほぼ現状の発展を維持するとみられており、豪ドル安とも併せて輸出の拡
大が期待できるという。輸出総額は2000/01年度(7〜6月)には863億豪ドル
(約5兆2,643億円:1豪ドル=61円)、2001/02年には893億豪ドル(約5兆4,473
億円)と増加が予想された。産業別に見ると牛肉産業では、短期的に、輸出需要の
増加で2000/01年度は、国内の牛肉セールヤード価格が1s当たり平均241豪セン
ト(約147円)まで上昇し、その影響によりと畜頭数も今後3年間で上昇するとさ
れた。輸出では、カナダ、アメリカの牛肉生産の減少によるタイトな供給状況と韓
国の牛肉輸入自由化による恩恵があるものと期待されている。特に、2000/01年度
の米国向け輸出量は35万1千トン(前年度比2%増)が見込まれている。

 一方、酪農産業は、昨年行われた飲用向け生乳取引の規制緩和の影響について、
ジョン・アンダーソン副首相が本会議第1日目の開催の挨拶の中で最も傷みを伴っ
た改革の例と述べたとおり、飲用向け乳価の取引価格が各州で大きく下落したが、
加工向けについては、2001/02年度は乳製品の国際価格の上昇に伴い取引価格も上
昇すると見込まれている。また、生乳生産量も2001/02年度で113億リットル(同2
.5%増)、その後2005/06年度では123億リットル(2001/02年度対比8.9%増)と
予想されている。また、輸出では特にチーズに対する需要が中期的に高く、2001/
02年度には国際価格が1トン当たり2,123ドル(約24万6千円:1ドル=116円・同
5.9%高)となり、他の乳製品と比較しても、高価格で推移するため豪州のチーズ
生産の増加要因になると予想されている。

 以上のように牛肉生産は緩やかな増加、生乳生産は堅調に増加と依然好調が見込
まれているが、会議では、米国の経済状況が減速を始めたことによる、豪州の主要
な輸出国であるアジア各国の経済に与える影響や牛海綿状脳症(BSE)や口蹄疫
のニュースが食肉、乳製品における世界の消費動向に与える影響など、増産を予測
しつつも不確定要素も少なくないことを指摘している。豪州は牛肉、乳製品ともに
生産量の6割以上を輸出しており、その生産動向は世界の需給と結びついている。
今後の動向に注目したい。


元のページに戻る