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フィリピン、豪州産生体牛の輸入規制撤廃へ



【シンガポール駐在員 宮本 敏行 3月8日発】フィリピンのモンテメーヤー農
業長官は2月28日、EU産畜産物の輸入禁止により、国内の畜産物需要のひっ迫感
が強まることが予測されるとして、現在行われている豪州産生体牛の輸入規制を撤
廃するとともに、生体牛の輸入関税を引き下げる考えを明らかにした。農業省およ
び関税関連協議委員会は直ちに、現在7%である生体牛の輸入関税を、2年前の水
準である3%に引き下げるための協議に入るとしている。

 フィリピンは昨年、当時のエストラーダ政権の下、輸入に必要なフィリピン産果
物の安全性検査を豪州が開始しないことへの対抗措置として、1月に生体牛の輸入
関税を3%から7%へ引き上げ、次いで6月に同国からの生体牛輸入を、毎年前年
比で20%ずつ削減すると発表した。この削減措置は、10月に行われた、口蹄疫の清
浄化が間近に迫るミンダナオ島への生体牛の緊急支援などを契機に5%削減へと緩
和されたものの、前政権は、2年後を目途に安全性検査の終了が確認されるまでは、
この措置を撤廃しないとの強硬な姿勢を崩していなかった。

 しかし、この状況は、EUにおいて牛海綿状脳症(BSE)の発生が深刻化した
ことや、イギリスで新たに口蹄疫が発生したことから一変した。フィリピン政府は
2月27日、以前から取られていたEU産の牛および牛肉に続き、イギリス産の食肉
などの輸入禁止措置を講じた。しかし、フィリピンが輸入する畜産物の約半数が、
EU地域からのものと言われており、この措置によって、同国が深刻な畜産物のひ
っ迫状態に陥る危険性が指摘され始めるとともに、その対策を求める声も高まった。
従来の方針を覆すモンテメーヤー農業長官の突然の声明には、EU産畜産物の輸入
禁止による需給への影響を、豪州産生体牛の輸入条件を従来の形に戻すことで、あ
る程度和らげようとする意図があるものと考えられる。農業省によると、2〜3週
間のうちには、アロヨ大統領によって関税率を3%に引き下げる政令が交付される
見込みである。

 なお、同農業長官は、規制撤廃に加えて、フィードロット企業やトウモロコシ、
ココナツ生産農家の財政的な援助も行う必要があると述べている。2000年における
フィードロット企業の収益は、生体牛価格の高騰およびペソ安によって減少傾向に
あり、同年の輸入頭数は、削減措置の影響も加わって前年比21%減の19万7千頭に
とどまった。

 農業省によると、関税関連協議委員会は、すでに関税率の引き下げには同意して
いるが、昨年1月に3%から7%に引き上げた事実がある以上、この矛盾を解消す
るため、産業界の各セクターと関税引き下げの影響について議論する必要があると
している。また、農業省の一部には、生体牛の輸入頭数削減は、貿易不均衡を是正
するために正当な手続きを踏んで施行されたものであるとして、削減措置の早急な
撤廃に慎重な姿勢を見せる向きもあり、規制の撤廃が直ちには実現しないことも考
えられる。

 フィリピンでは現在、汚職との関連が取りざたされる前政権の政策を、全面的に
見直す作業が進められており、今回の声明も、その一環であろうとの声が一部では
ささやかれている。しかし、フィリピンが豪州産生体牛輸入政策の転換を行うこと
で、両国にとっては思いがけない懸案の解決期が訪れようとしていると言えそうで
ある。


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