ALIC/WEEKLY


口蹄疫対策で国境監視の強化を図るブラジルとチリ



【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 3月21日発】現地報道によると、ブラ
ジル南部3州(パラナ、サンタカタリナ、リオグランデドスル)の農務長官は3月
14日、ブラジル農務省に対し、隣国アルゼンチンで口蹄疫が発生したことから、
3州とアルゼンチンおよびパラグアイとの国境監視のため、陸軍および海軍を投入
するとともに、口蹄疫防疫緊急対策費の支出と牧畜業者への補償などを要請した。
これを受け、ブラジル農務省は国防省に対し、陸海軍の出動を要請すると報じられ
た。

 南部3州の中でアルゼンチンとの国境線が最も長いリオグランデドスル州は特に
警戒感を強めており、監視用の車両や機材の購入費、牧畜業者への補償金などとし
て3,900万レアル(約2億3千万円:1レアル=58円)の支出を申請している。

 また、アルゼンチンの口蹄疫発生により、ブラジル南部地域へ口蹄疫ウイルスが
侵入する危険性が高いとして、学識経験者などを中心に同地域でワクチン接種を再
開すべきとの世論が高まっている。ブラジル農務省は2000年4月27日付け省令第
153号で南部2州(サンタカタリナ、リオグランデドスル)を口蹄疫ワクチン不接
種清浄地域として宣言しているが、ワクチン接種の再開について、昨年8月に口蹄
疫が発生したリオグランデドスル州の農務長官は、前向きの考えを示す一方、近年
の口蹄疫発生が見られないサンタカタリナ州は反対の立場を表明している。こうし
た論議について、プラチニデモラエス農相は、ワクチン接種の再開により、同国の
主要養豚州であるサンタカタリナ州の豚肉輸出に後退が予想されるなどから、慎重
に検討を行う必要性があるとしている。

 また、アルゼンチンと南北に長い国境を有するチリも国境の監視体制を強化して
いる。チリ農牧庁によると、同国中部では、アルゼンチンと国境をなすアンデス山
系を利用した夏期放牧が行われるが、今年度は、約25万頭(ヤギ50%、牛25%、羊
20%、その他5%)の家畜が放牧された。同庁では、こうした家畜は、アルゼンチ
ンから不法輸入される家畜と接触する可能性が高いことなどから、放牧されている
家畜の臨床検査、放牧地での血清学的監視、下山する家畜の検疫などを実施すると
発表した。

 なお、チリ食肉処理加工施設協会がまとめた報告書によると、同国における99年
の冷蔵・冷凍牛肉(骨なし)輸入量は牛肉消費量の約3分の1に当たる11万6千ト
ン(枝肉ベース)で、このうちアルゼンチン産が5割を占めている。チリ農牧庁は
3月13日以降、アルゼンチン産牛肉輸入を一時的に禁止すると発表したが、この
措置による供給量の減少分は、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、ニュージーラ
ンド、オーストラリアなどからの輸入で補うことが可能として、牛肉消費者価格の
高騰は回避できるとみている。


元のページに戻る