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【ブラッセル駐在員 山田 理 3月23日発】イギリスでの口蹄疫の感染拡大が 続いている。イギリス農漁食料省(MAFF)によると、口蹄疫の発生確認件数は 3月23日(16:30)までに501件に上っている。発生から約1ヵ月が経過したが、 1日の発生件数は日ごとに増加しており、今のところ終息の目処は立っていない。 処分された家畜は32万頭に達し、このほか18万頭が処分待ちとなっている。感染 家畜などの処分を遂行するため、軍隊も動員されることとなった。 政府は、感染の拡大を防止するため、北イングランドおよび南スコットランドの 発生多発地域については、口蹄疫の発生が確認された農場だけでなく、発生農場か ら3キロ以内の農場についても全家畜を処分する方針を明らかにしている。このほ か、ノーザンプトンなどの3つの家畜市場が感染拡大の場になったとして、3市場 を経由した家畜やこれらと接触した家畜も処分対象に含めるとしている。 発生農場飼養分以外で処分対象となる家畜は50万頭に上るとの見方もあり、こう した政府の方針に対し、一部の畜産農家は強く反発しており、代替案としてワクチ ン接種の実施を求める声も出ている。 同国は、67年にも口蹄疫の大発生を経験しているが、今回の発生は、感染地域も より広く、家畜の処分頭数も前回の大発生時を上回るのは確実とみられる。 3月19日に開催されたEUの農相理事会では、牛海綿状脳症(BSE)問題と ともに、口蹄疫対策も重要議題として協議された。この中でワクチン接種について も検討されたが、早急な実施は見送られ、イギリスおよびフランスでの感染家畜の 処分による現行の感染防止対策を支持することが確認された。 このような中で、オランダ農業省は3月21日、東部のオルスト市などの2農場 で口蹄疫の発生が確認されたと発表した。イギリスでの口蹄疫発生以後、欧州大陸 での発生確認は、13日のフランスに次ぐものである。感染の拡大を防ぐため、@2 つの発生農場に加え、A発生農場の家畜と接触のあった家畜を飼養する2農場およ び、Bこれら4農場から1キロ以内の農場で飼養されている家畜は全頭処分される 見込み。また、同国内全域を対象に家畜の移動が暫定的に制限された。発生農場の うち、1農場は、今年に入って、家畜の購入、販売とも実績がなく、感染経路は今 のところ不明である。 これを受けて、EUの常設獣医委員会(SVC)は同日、オランダからの家畜な どの輸出禁止など、フランスで採られたものと同様の措置(海外駐在員情報第476 号参照)を採択した。また、23日のSVCの緊急会合では、感染拡大を防止するた め、オランダ政府が強く求めていた処分対象の家畜に対するワクチン接種について、 感染家畜などの迅速な処分が困難な場合に限り認められることとなった。 3月22日にはオランダでの3件目の発生が確認されたほか、アイルランドでも 口蹄疫の発生が確認されるなど、EUでの口蹄疫の発生は4ヵ国に広がり、事態は さらに深刻さを増している。
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