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【シドニー駐在員 野村 俊夫 3月22日発】豪州2大乳製品加工メーカーの1 つであるボンラックは、このたび、民間調査機関(グラント・サミュエル)によっ て、同社の業績が既に経営存続不可能なほど悪化しており、他社との合併再編が不 可避だと査定された。現在、合併相手はニュージーランド・デイリーボード(NZ DB)が有力視されているが、その動向は単に豪州の1乳業メーカーの去就にとど まらぬ影響を及ぼすとみられている。 ボンラックは、マレーゴールバンとともに豪州を代表する組合系乳製品加工メー カーの1つであり、ビクトリア州およびタスマニア州に約3千戸の酪農生産者組合 員を抱えている。 近年、ボンラックは豪州酪農乳業界の規制緩和を機に多様化する消費者ニーズに 幅広く対応しようと大幅な事業拡大戦略を繰り広げてきたが、これが完全に失敗し、 現在では総額562億豪ドル(約3兆3,720億円:1豪ドル=60円)の負債を抱えてい るとみられている。これまで、複数の中小乳製品工場を売却、子会社の果汁飲料メ ーカーを売却するなど、経営の再建に力を尽くしてきたが、かなり行き詰まった状 況にある。 こうした中、NZDBは昨年4月、ボンラックの株式を25%取得して同社との提 携に踏み出した。NZDBによると、同社と同額出資で豪州国内の一般消費者向け 乳製品の販売企業を新たに設立するほか、既に豪州に設立した原料乳製品の販売企 業を同社に売却し、一方ではNZDBの国際販売ネットワークを利用して同社の製 品を海外に販売する。これにより同社の経営を再建し、来年度から傘下の組合員に 豪州平均に近い乳価を支払うことが可能になるとしている。両者は既に豪州消費者 競争政策協議会(ACCC)から合併の承認を得ており、後は来月のボンラック組 合員大会で承認(賛成75%以上)を得るのみとなっている。 一方、3月22日には、別の有力な買収提案が正式に公表された。名乗りを上げた のはマレーゴールバンと大手飲用乳メーカーのナショナルフーズで、前者がボンラ ックの原料乳製品部門(工場施設を含む)を買収して全組合員の生乳を受入れ、ナ ショナルフーズは2億5千万豪ドル(約150億円)を拠出してボンラックの豪州国 内の一般消費者向け乳製品部門を買収するという内容である。 これはNZ乳業の豪州進出に対する牽制とも受け取れるが、タスマン海を超えた NZ乳業の進出は、今回のNZDBのみならず、ニュージーランド・デイリーグル ープ(NZDG:NZ2大酪農組合の1つ)のナショナルフーズ20%株式取得、キ ウイ(同)の西オーストラリア州大手乳業メーカー51%株式取得など、急速に進み つつある。 また、NZDG、キウイ、NZDBの3社合併によるNZグローバル・コーポレ ーションの設立(現在手続き進行中)が実現すれば、NZ乳業の豪州への進出はさ らに新しい段階に進むことになる。 こうした意味で、今回のボンラックの動向は、豪州だけにとどまらず、両国ひい ては国際乳業界に大きな影響を及ぼすとみられており、来月に予定されているボン ラック組合員大会の決定が大いに注目されている。
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