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インドネシア、米国の援助で学乳事業を継続



【シンガポール駐在員 宮本 敏行 3月22日発】インドネシア教育省の発表に
よると、インドネシアと米国は3月13日、今後2年間延長して行われる学乳事業の
援助プログラムに調印した。この事業は、人口の6割が集中するジャワ島の首都ジ
ャカルタおよびジョグジャカルタの2大都市、中央ジャワおよび東・西ジャワの3
州において、47万人の小学生を対象に1,400万ドル(約17億5千万円:1ドル=125
円)を費やして行われるとされている。これにより、ジャワ島の児童は引き続き、
週3回、学乳の供給を受けることとなる。

 教育相と在インドネシア米国大使との間で調印が行われたのを受け、ワヒド大統
領は、国連大使を含む米国関係者を官邸に招き、謝意を表した。米国は、学乳事業
への援助の第一弾として、99〜2000年の2年間、総額700万ドル(約8億8千万円)
に相当する5千トンの粉乳を提供した。これにより、ジャワ島の2,500校の児童40
万人が初めて学乳の恩恵を受けることとなった。さらに、米国は昨年、2回目の援
助として8,500トンの粉乳および栄養強化ビスケット用に1万トンの小麦の提供を
公約している。これらの総額は2千万ドル(約25億円)と試算されているため、今
後も追加支援策が講じられるものとみられる。

 インドネシアでは従来、牛乳を飲む習慣がなかったものの、経済の発展とともに
商業ベースでの乳業の育成が進んだことから、乳牛の飼養頭数は増加傾向にあり、
他の主要な大型畜種と比較すると、その増加率は高水準にある。99年の乳牛の飼養
頭数は33万2千頭で、90年と比較すると12.9%増加している。同様に、99年におけ
る他の畜種の増加率は、肉牛が10.5%(1,150万7千頭)、豚が2.4%(732万1千
頭)、地鶏が25.7%(2億5,319万羽)、ブロイラーが17.9%(3億8,517万羽)と
なっており、乳牛の増加率は地鶏、ブロイラーに次いで高い。

 一方、生乳生産量の推移を見ると、97年に始まった経済危機の影響を受け、96年
の44万1千トンから、98年には37万5千トンと14.9%もの大きな減少を見せている。
99年には43万6千トンと経済危機以前の水準に回復したものの、同年の1人当たり
消費量は5kgに過ぎず、フィリピン(16kg)、タイ(20kg)、マレーシア(30kg:
98年)など他のアセアン主要国との比較では目立って低い水準となっている。

 こうした状況を打開する意味からも、学乳事業への期待は高まっているが、これ
を推進していく上での幾つかの問題点も指摘されている。一部では、事業に対する
理解不足から、伝統的な食文化を冒とくするものといった意見が出されたり、児童
がなかなか牛乳に慣れ親しまないことから、多くの牛乳が無駄に廃棄されているこ
となどが挙げられている。これらに対し、米国大使は、学乳事業は児童に新たな栄
養源を提供するものであり、米国がインドネシアの食文化を変えようと画策してい
るわけではないとの声明を発表した。また、インドネシア政府は、児童が牛乳によ
り親しむようにするため、教師や父母が率先して多くの牛乳を消費すべきとしてい
る。

 同国では現在、政策への不満や地方の独立問題などから、ワヒド大統領への非難
が高まっているが、今回の米国の援助による学乳事業の継続には、現政権の人気回
復を狙った側面もあるのではと見る向きもある。


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