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【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 4月26日発】EU委員会はこのほど、肉骨粉 の飼料利用に関する報告書を加盟各国に提示した。その中で、今年1月から暫定的 に実施されている家畜への動物性飼料の全面禁止措置について、当初の6月末まで の予定実施期間を延長するよう提案した。4月25日の農相理事会で合意が得られた ため、近々常設獣医委員会で議論・決定される予定である。 報告書の概要は以下の通り。 96年初めのBSE危機以来、動物性飼料原料に関する多くの法令が採択されてき た。EUの関係法令は、最新の科学的助言に十分に沿ったものである。完全な法的 枠組みを整備するため、現在、既存の法令を作り直した形の、伝達性海綿状脳症に 関する規則および非食用向け動物性副産物に関する規則を提案している。 食品獣医局(FVO:Food and Veterinary Office)が全加盟国で96年から現在 までに行った調査結果からは以下の結論が導かれる。 大きな経済的投資の結果、家畜飼料向けほ乳動物たんぱくを製造しているEUレ ンダリング工場のすべてが97年4月に決められた圧力調理基準に沿った設備を備え ている。 レンダリング業界に対する行政管理は、最初の調査(96〜97年)時点に比べ、大 変強化されているが、まだ一般に不十分と考えられる。 ほ乳動物たんぱくの反すう動物への給与禁止および特定危険部位(SRM)の除 去はかなり改善が必要である。ただし、大きな改善が図られた国もあり、特にデン マーク、オランダ、アイルランドでは、反すう動物用飼料がBSE感染源の可能性 のあるほ乳動物たんぱくに汚染されるのを防ぐ効果的対策が行われている。 EU理事会決定(2000/766/EC)では、2001年6月末まで家畜への動物性たんぱ くの給与を一時停止することとし、その期限については、調査結果およびBSE発 生状況に照らしてEU委員会で採択することとされている。BSEに関するEUお よび各国の規定の有効性について、事実に基づく情報を提供するためには、さらな るFVOによる調査とより多くのBSE迅速検査の結果が必要である。こうした状 況の下、委員会は停止解除が時期尚早・不適切であるかを検討しなければならない。 明快な選択肢は、提案中の非食用向け動物性副産物に関する規則の採択・実施ま で家畜への動物性たんぱくの給与の一時停止を延長することである。提案中の規則 では、食用に適する動物から得られたもののみを飼料原料とすることおよび食用に 不適な廃棄物の厳密な管理対策を規定している。これらの規定は科学的に正当化さ れており、WTOで守ることが可能であるとともに、EU議会や経済社会委員会で も支持が見込まれる。また、同規定は動物性副産物の安全な使用・廃棄のためのE Uにおける枠組みを提供するものである。各国の体制が異なり、消費者を受け入れ がたい危険にさらすおそれがあるという現状に比べ、この選択肢は明らかに好まし い。 なお、動物性飼料の家畜への恒久的全面禁止についていくつかの視点から要望が あるかもしれないが、それは、加盟国、業界、農業関係者が基本的なEU法令を実 施できないと認識していることを意味するものである。また、加盟国および業界が、 基準を改善するために過去4年間行ってきたすべての努力と投資による利益を放棄 することになる。さらに、恒久的禁止を行う場合は、EU域外国からの輸入畜産物 に関しても同等の措置を求めるかどうかという問題が出てくるだろう。
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