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【シンガポール駐在員 小林 誠 4月26日発】4月17日に仏暦の新年を迎えた ミャンマーでは、畜産物や家畜飼料の価格が高騰し始めている。周辺諸国では、新 年を迎えるまでの間に食料品の需要が増し、価格が高騰する傾向がある。しかし、 同国では国民の不満を抑え込む意味から、この時期には当局の監視の目が厳しく、 小売業者は年明けとともに一気に価格を引き上げる傾向があるという。 ミャンマーの国土面積は、約69万平方キロと日本の2倍弱、人口は約4,170万人 で日本の3分の1程度である。国土の中央を南北にイラワジ川が縦貫し、作物生産 には適した土地であるといわれる。作物の主体は米、大豆、トウモロコシなどで、 ゴマや落花生の搾油かす、フィッシュミールも豊富に生産され、濃厚飼料の自給も 可能なため、畜産物生産コストは極めて低いといわれている。同国では、魚資源も 豊富であり、雨期には魚、そして乾期には鶏肉、豚肉を中心とした畜産物が国民の 主要なたんぱく源とされている。このため、国の機関も農業省とは別に畜水省があ り、水産物との組み合わせによるたんぱく源の確保に努めている。なお、牛は役用 が中心であり、肉資源としては重要視されていない。 同国の新年は、乾期の終期に当たる4月中旬であり、日中の最高気温が連日40度 を超える。このため、同国の食肉源として最も好まれている鶏には、熱射病による へい死が発生するほかニューカッスル病が多発し、養鶏業に打撃を与えている。な お、畜水省によれば、乾期の終わりには、大部分の農家では、ほとんどの鶏が処分 されるため、毎年、清浄化が行われていることになるとしている。なお、同国の20 00年末現在の家畜飼養頭羽数は、牛が1,074万頭、水牛が239万頭、ヤギと羊が合計 で173万頭、豚が372万頭、鶏(地鶏)が3,442万羽、ブロイラーが153万羽、卵用鶏 が264万羽となっている。 4月17日を境とした畜産物などの価格変動は、鶏卵が1個当たり14チャット(約 3.5円:1チャット=0.25円)から17チャットへ(約4.3円)、鶏肉(地鶏)が1s 当たり450チャット(約113円)から581チャット(約145円)へ、鶏肉(ブロイラー) が同281チャット(約70円)から488チャット(約122円)へ、フィッシュミールが 1トン当たり1万6千チャット(約4千円)から1万8千チャット(約4,500円) へ、ゴマ油かすが1s当たり53チャット(約13円)から69チャット(約17円)へと それぞれ上昇しており、国民生活に与える影響は甚大なものとみられる。ちなみに、 同国の労賃は、聞き取りによれば、農場労働者で1月当たり平均約5千チャット (約1,250円)、工場労働者で同約6千チャット(約1,500円)程度となっており、 労働コストは隣国タイと比べても20分の1以下であるとみられる。 なお、同国の通貨であるチャットは、外国貿易銀行が公表している公定レートで は、1チャットが約19円だが、市中の実勢レートは1チャットが約25銭(2001年4 月1日現在)と、公定レートの約80分の1しかない。しかも、実勢レートはこのと ころ急速に下落しており、4月26日現在では20銭を割り込んでいる。 同国政府は、畜産振興が急務であるとして、民間業者による畜産技術連盟の設立 ・整備を急いでおり、畜産物の価格安定に向け、これがどのように機能するのか、 今後の動向が注目される。
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