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EU委、羊、山羊肉に関する制度改革案を公表



【ブラッセル駐在員 山田 理 5月17日発】EU委員会は5月16日、羊および
ヤギ肉に関するEUの制度改革案を公表した。

 EUにおける羊およびヤギ肉の生産量は、豚肉の1割以下、牛肉および子牛肉の
12%程度に過ぎない。しかし、一部地域、特に条件不利地域にとって、羊およびヤ
ギの飼養は地域を維持するための重要な産業となっている。加盟国別に見ると、イ
ギリスが最大(EU全体の約1/3)の生産国で、次いでスペイン(22%)、フラン
ス(13%)と続く。

 羊肉などの域内自給率は100%を割り込んでおり、域内消費の約2割を域外から輸
入している。こうしたことから、同部門は、生産過剰の解消と価格支持等に対する
財政負担の軽減を主目的とした99年のアジェンダ2000に基づく共通農業政策(CA
P)改革には含まれていない。

 現行制度は、92年のCAP改革に基づき飼養者への直接支払いと民間在庫補助を
柱とするものである。雌羊奨励金の単価は、毎年設定される基準価格と平均市場価
格の差に係数を乗じて算出される。係数は雌羊1頭が生産する子羊肉の平均的な量
を勘案して算定されるが、実際には関係統計情報が整備されていないため、推計値
を基に算出せざるを得ない。

 このため、@イギリスやスペインなどの生産量の大きい国の価格変動がEU全体
に適用される奨励金単価に大きく影響することや、A算出された奨励金の単価が基
準価格の水準を補償するには十分でない、などの欠点が指摘されていた。

 今回公表された制度改革案は、制度の単純化とともに、飼養者に市場動向をより
意識させるよう誘導するものとなっている。改革案の概要は次の通りである。

 @奨励金単価を固定化し、羊飼養者に対し、雌羊1頭当たり21ユーロ(約2,300
 円:1ユーロ=109円)の奨励金を支払う(93年から2000年の奨励金の平均単価を
 基に算出)

 A羊乳および乳製品を販売する羊飼養者やヤギ飼養者に対し、1頭当たり16.8ユ
 ーロ(約1,800円、@の単価の80%)の奨励金を支払う

 B個々の飼養者に対する奨励金交付限度の設定は継続する

 C条件不利地域の羊飼養者に対し、1頭当たり7ユーロ(約800円)を加算する。
 (羊乳および乳製品を販売する羊飼養者やヤギ飼養者に対する単価はこの90%)

 EU委員会のフィシュラー委員(農業/農村開発/漁業担当)は「安定的で、事前
に単価水準を知ることができる、一定単価による直接支払いは、羊などの飼養者に
対し、経営を発展させる確かな基盤を提供するものである」と述べている。

 EU委員会の提案は、奨励金交付事務の簡素化にもつながるだけに、各加盟国か
らは好意的に受け入れられるものとみられている。また、農業団体からは、透明性
が向上するとして評価する声が上がっている。


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