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【ブラッセル駐在員 山田 理 11月 1日発】2001年2月20日以降9月30日までの イギリスにおける口蹄疫(FMD)の発生総数は、2,030件に上っている。FMD 清浄化のために、約393万頭の家畜が殺処分され、過密飼養を避けるため、動物福 祉の観点から186万頭がと畜・廃棄された。 その結果、3月下旬〜4月上旬にかけて40件以上あった1日当たりの発生数も、 その後は着実に減少した。8月以降のFMDの発生は、イングランド北部のカンブ リアとノーサンバーランドの2地域に集中しており、10月以降については、新たな 口蹄疫の発生は報告されていない。今回のFMDの発生では、めん羊および牛を中 心に感染が拡大したが、豚への影響は比較的小さかった。 こうした状況を受けて、EUの常設獣医委員会(SVC)は10月11日、グレート ブリテンの一部地域からEU諸国への豚肉輸出を条件付で再開するとしたEU委員 会の提案を支持した(北アイルランドについては、FMDに関する規制措置は7月 7日に既に解除されている)。この措置は、EU委員会により正式決定(委員会決 定2001/740/EC)され、10月22日から施行された。 豚肉の輸出が認められた地域は次のとおりである。 ・ シェトランド諸島などの北部3諸島 ・ スコットランド:南部のダンフリー、ギャロウェイおよびイングランドとの境 界部を除く全地域 ・ グレートブリテン東部:イングランド東部のハンバーサイド、リンカーンシャ ーなどや南部のハンプシャー、ドーセットなど計15地域 ・ グレートブリテン西部:ウェールズ北部のグィネス(アングルシー島を除く) およびクルーイド また、輸出に当たっては、厳しい条件が定められた。その主なものは以下のとお りである。 ・ 豚肉の出荷に当たっては、イギリスの家畜衛生当局の承認を受けること ・ 4つに分けられた各地域グループの中で過去90日間FMDの発生がないこと ・ 輸出向けの豚はと畜場に搬送されるまでの30日間、家畜衛生当局の監督下に置 かれること。また、当該農場から10km以内で少なくとも過去30日間にFMDの発 生がないこと ・ 輸出が認められた農場には、輸出向けの豚がと畜されるまでの30日間、FMD に感受性のある畜種を導入していないこと ・ 輸出向けの豚は、と畜場に搬入後24時間以内にと畜するものとし、輸出が認め られていない豚と区分すること ・ と畜場での公認獣医官による臨床および死後検査で、FMDに関する徴候がみ られないこと ・ 豚肉はと畜後、24時間以上当該施設内に保留すること なお、10月24日に開催されたSVCでは、豚肉の輸出可能地域の拡大とともに牛 肉の輸出再開も認められた。さらに、めん羊・ヤギについても、11月6〜7日に開 催されるSVCの次回会合で審議される予定である。 口蹄疫の発生から8ヵ月を経て、同国産食肉のEU域内への本格的輸出再開に何 とかめどが立ったと言える。
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