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【シドニー駐在員 幸田 太 11月 1日発】ニュージーランド(NZ)の協同組合 系乳業会社フォンテラ(旧グローバル・デイリー・カンパニー)は10月16日、会社 として活動するための正式な手続きをすべて完了したと公表した。 フォンテラは、オークランドに本社を置き、社員数(グループ含む)約2万人、 取引相手国120カ国、グループ資産110億NZドル(約5,500億円:1NZ=50円)、 国内生乳生産の約95%を処理・加工・販売する。その輸出額はNZ全体の輸出額の 約20%を占め、NZのGDPの約7%に当たるとされている。 ちなみに、新名称「フォンテラ」はラテン語のフォン:泉、テラ:大地を意味し ている。 今回の最終合意に至までの経緯は、次のとおりである。 1999年9月、NZ政府は国内の8酪農協を可能な限り統合した上で、NZ・デイ リーボード(NZDB)の販売機能を取り込んだ巨大酪農協を2000年9月から設立 する酪農産業再生法を議会で成立させた。 しかし、商務委員会(日本の公正取引委員会に準じる)が合併後の巨大酪農協が 国内で生産される生乳のほぼすべてを扱うことで、国内価格を容易にコントロール できてしまうことを理由に、設立承認を保留した。 さらに、合併予定8酪農協のうち大手2農協(NZDG,KIWI)の双方の資 産評価をめぐる対立等で決裂状態となり、同法は、廃案となり政府主導の大合併構 想はとん挫した。 こうした中、昨年12月、NZDGとKIWI両組合は両酪農協の国際化対応等、 問題意識の一致から再び歩み寄り、デイリー・グローバル・カンパニー設立につい て基本合意に達した。 また、今年4月にはNZ政府は障害となっていた商務委員会の承認審査を、超法 規的措置により免除したことから、設立に向けて一気に前進し、新合併法案が作成 された。これには、NZDBの一元輸出を1年後から段階的に撤廃し誰でも自由に 輸出可能とすること、また、生産者が生産する生乳についてデイリー・グローバル ・カンパニー以外の競合会社に販売できることなど独占のイメージを払拭する内容 が盛り込まれた。 6月にNZDGとKIWI両組合員の投票によりそれぞれ80%以上の賛意を得た ことで、75%以上の支持が条件となっていた問題もクリアされた。 9月には、合併法案がNZ国会で可決された。今回の正式な会社活動に係る手続 きの完了により、名実ともにフォンテラとしての営業活動の開始となった。 現在、フォンテラは、昨年から積極的に海外の乳業企業への資本投資、業務提携 を展開しており、豪州ではナショナルフーズ(豪州3大乳飲用メーカーの1つ:ニ ューサウスウェールズ州)、ボンラック(2大組合系乳製品メーカーの1つ:クイ ンズランド州)、ピーター&ブラウン(アイスクリーム企業:西オーストラリア州) をすでに傘下に収めている。8月には、米国において食品大手ネスレ社との原料乳 製品供給での事業提携、また、子会社であるニュージーランドミルクプロダクツも、 同じく米国のデイリーアメリカとの脱脂粉乳販売契約締結を発表している。10月に は、イギリスのアルーラフーズグループ(ARLA)との合弁でフォンテラ25%、 ARLA75%のEUをカバーする新会社を設立することも発表した。 フォンテラ設立の意図は、人口350万人の小さな島国であるNZが、国際乳製品 市場において、並み居る巨大多国籍企業へ対抗することであった。今、まさにオセ アニアにとどまらず世界に打って出るその姿が現実のものとなった。
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