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ハーキン上院農業委員長、次期農業法案を提案(米国)


【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 11月 1日発】米連邦上院農業委員会のハーキ
ン委員長(民主党・アイオワ州)は11月1日、自らの草案による次期農業法案のア
ウトラインを公表した。これによって、上院では、下院本会議を通過している法案
と、前委員長(現少数党リーダー)であるルーガー議員(共和党・インディアナ州)
が提案する法案を含む3本の農業法案が出揃うことになる。

 ハーキン法案は、ルーガー法案と同様に有効期間を5年としているが、その内容
は、比較的下院法案の方に近く、同氏がかねてから提唱してきた環境保全対策の拡
充や、他の2法案とは異なる農家セーフティ・ネット(価格・所得補償対策)の創
設が大きな特徴として挙げられる。

 まず、環境保全対策については、@自らが別途提出している環境保全保障法案
(Conservation Security Act)に基づき、農業を行いながら環境保全に取り組む
農家に対し奨励金を交付するという事業の新設がうたわれるとともに、A既存事業
についても、a)農地を休耕させる土壌保全留保事業(CRP)の対象面積の上限を現
在の3,640万エーカー(約1,456万ha)から4,000万エーカー(1,600万ha)に拡大す
ること、b)環境改善奨励事業(EQIP)の単年度の予算額を9億5千万ドル(約1,
140億円:1ドル=120円)にまで増額することなど、5年間でみると3法案中で最
も多くの予算が充当される見込みとなっている。なお、EQIPの中には、家畜排せつ
物の管理施設を対象にした年間1億ドル(約120億円)規模の低利融資も含まれて
いる。

 農家の価格・所得補償対策としては、下院法案と同様に、穀物などの主要作物に
関するマーケティング・ローン制度や、96年農業法で導入された農家直接固定支払
いなどを存続させるとともに、新たに価格変動に対応した直接支払い(counter-cy
clical payment)の導入が提案されている。ただし、下院法案に比べると、ローン
・レート(融資単価)の水準が高めに設定される一方で、農家直接固定支払い補償
単価は、およそ半分の水準に抑えられている。

 また、新しい直接支払いについても、下院案が96年農業法で廃止された不足払い
制度を復活させようとしているのに対し、ハーキン法案では、単位面積当たりの全
国平均収入が、毎年、作物ごとに、あらかじめ設定された単位面積当たりの目標収
入(固定額)を下回った場合に、その差額が各農家の基準面積に基づいて交付され
るという仕組みとなっている。この場合の全国平均収入は、(当該年の全国生産量)
×(年間平均価格または全国の平均ローン・レートのいずれか高い方)÷(全国作
付面積)という算式で計算され、また、目標収入は、例えば、小麦が120ドル/エ
ーカー(約36千円/ha)、トウモロコシが270ドル/エーカー(約81千円/ha)に
設定されている。

 さらに、加工原料乳の価格支持制度については、下院同様、支持価格を現行水準
の9.90ドル/ポンド(約26円/kg)に据え置き、2006年まで継続することとしてい
る。

 上院農業委員会では、ハーキン委員長主導の下、10月31日から法案の締めくくり
審議(マークアップ)が開始され、11月上旬には審議を終わらせるとの意向も明ら
かにされるなど、これまでのスローペースから事態が急転しており、目が離せない
状況となっている。
 

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