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躍進するブラジル中西部の肉牛生産
【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 11月8日発】ブラジルの肉牛生産は、15
49年にポルトガル国王直轄の総督府が設置されて以降、1822年まで続いた植民地時
代に、砂糖、金やダイヤなどの希少鉱物資源、コーヒー豆と同様、同国経済を支え
た産業だった。
ブラジル中西部は、首都ブラジリアがある連邦直轄区、マットグロッソ、ゴイア
ス、マットグロッソドスルの3州1連邦直轄区を合わせた地域であり、牛の総飼養頭
数約1億6千万頭のうち35%を占める肉牛主要生産地域で、中でもマットグロッソド
スル(MS)州は、約2,200万頭を飼養する最大の肉牛生産州である。
2001年の国際獣疫事務局(OIE)の年次総会でMS州が口蹄疫ワクチン接種清
浄地域に認定され、中西部全域がワクチン接種清浄地域となった。近年、MS州は
ブラジルの牛肉輸出量の約半分を占めるといわれ、今後もブラジルの牛肉輸出にお
いて重要な位置付けがされると思われる。
ブラジル中西部が肉牛生産で進歩を遂げた下地は、20世紀後半以降、同国の厳し
い自然条件に適した肉牛品種と牧草の組み合わせによる肉牛生産が、政府の農業金
融支援により強力に進められたことにある。
1890年代にインドから導入されブラジルの気候風土に適し最大の肉牛品種に成長
したゼブーの短角グループに属するネローレ種と、1年の半分が乾期でやせた土壌
のセラードと呼ばれるブラジル中央部の熱帯草原(サバンナ)気候の植生に適した
侵略性の強いイネ科牧草のブラキャリア(アフリカ原産、シグナルグラスとも呼ば
れる)との組み合わせがブラジル肉牛生産の原点かつ基本である。
さらに90年代に入り、従来の南部に続き、中西部の畜産業が発展した理由は、次
のとおりである。
@ 中西部は穀物生産地であり、家畜飼料の調達が容易で輸送コストも安い。
A 地代、労賃、飼料コストが安い。
B 潜在的な消費地である。
C 中西部諸州の政府による産業誘致のための優遇税制や企業プロジェクトへの
金融支援が措置されている。
ブラジルでは、放牧肥育で生産された牛肉を「緑の牛」というキャッチフレーズ
でそのヘルシーさを売り物にして全国的に販売展開している。また、最近は中西部
のパンタナル湿原で子牛の有機生産を開始するなど昨今の時流に乗っている。こう
した中、畜産関係者の興味は世界が求める肉質の研究とそのための方策を探ること
に向いているようだ。
ブラジル牛肉生産の推移(単位:万トン、枝肉ベース)
|
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
全国 |
641 |
641 |
642 |
668 |
702 |
中西部 |
178 |
179 |
184 |
204 |
216 |
マットグロッソドスル州 |
67 |
67 |
68 |
78 |
90 |
(参考)輸出量 |
29 |
37 |
54 |
55 |
71 |
資料)民間調査会社調べ。輸出量は全国ベース。2001年は推計値。
記事の訂正
平成13年11月6日号(通巻第507号)の「巨大企業フォンテラ始動」の記事中、「ボンラック(2大組合系乳製品メーカーの1つ:クインズランド州)……(本文右段、上から22〜23行目)とあるのは、「ビクトリア州」、また、「イギリスのアルーラフーズグループ……(本文右段、下から9〜10行目)」とあるのは、「デンマークの……」にお詫びして訂正します。 |
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