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GM研究開発の禁止措置を解除(NZ)


【シドニー駐在員 幸田 太 11月8日発】ニュージーランド(NZ)政府は10月
31日、かねてから議論を重ねていた遺伝子組み換え(GM)技術に対して、The 
Royal Commission(NZ王立委員会)のGM研究等のあり方に対する答申を尊重し、
現行の管理体制を強化する前提でこの2年間にわたるGM研究開発の禁止措置を解
除した。

 NZ政府が発表した公式な報告のポイントは、@将来的な商業利用可能性の拡大、
Aその状況に関する可能性調査となっている。これにより、今回新たに今後2年間
にわたってGM作物の商業利用を制限することを念頭に置き、環境危険管理委員会
(ERMA)により管理運営されている危険物質新生物体法(Hazardous Substa
nces and New Organisms Act)の改正を検討している。さらに、人体に影響がな
いとされているGM作物に関する報告書の追加提出、ERMAによるそれらの安全
性、自然環境への影響評価も実施される計画である。また、研究段階で対象となる
作物、種子、生物の特定や報告、廃棄に関する規制も整備される予定である。

 NZ王立委員会は、今年7月末、GM研究開発はNZの産業にとって国際競争力
を高めるには必要不可欠であり、現行の管理体制を強化する前提(GM問題に対応
する独立組織の設置)でその導入を支持する答申を発表した。このことが、政府の
GM研究禁止措置に一石を投じることとなり、GM推進派と反対派の間で激しい議
論が展開されていた。   

 この答申作成に当たっては、昨年4月から、1年以上の歳月を費やし、延べ1万
人以上が意見を陳述し、330人の専門家からの助言を受け検討が行われた。

 検討の段階で問題視されていたのは、GM研究開発が中止されていることが、農
業ばかりではなく、医療、食品等の産業が国際競争力の面で少なからず影響を受け
ており、産業界ではこの他国産業と技術的な開きが顕著になり危機感を募らせてい
たとされる。

 クラーク首相は、今回の政府決定の発表にあたってGM研究開発により、国民を
危険にさらすことがないよう、厳しい規制の下で調査研究の許可を行うなど、安全
性に重点を置いたものであり、健康と環境を守ることと将来的な革新技術の推進と
のバランスがとれたものであると述べている。

 NZの農業は、その豊かな自然条件を巧みに利用し、低コスト生産を行ってきた。
中でも、乳製品、牛肉、羊肉、羊毛、野菜等、農牧畜業生産品の輸出依存度は極め
て高く、強い競争力が必要となっている。NZ政府は今回、国民の健康、環境への
影響に配慮した厳しい監視体制を条件にGM作物研究再開の道を選んだ。GM作物
の優位性と安全性をどのようにバランスさせてゆくか、今後の対応に注目したい。
  

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