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EU、脱脂粉乳に対する輸出補助を再開


【ブラッセル駐在員 山田 理 11月15日発】EUの乳製品管理委員会は11月15日、
バター、脱脂粉乳(SMP)および全脂粉乳(WMP)に対する輸出補助金の単価
引き上げを採択した。引き上げ後の補助金単価は、以下のとおりである。

           (単位:ユーロ/100kg)
品目 輸出補助金単価 増減
改定後 改定前
バター 160 150 6.7%増
脱脂粉乳 10 0
全脂粉乳 60 50 20.0%増
 引き上げ幅はいずれも、100kg当たり10ユーロ(約1,090円:1ユーロ=109円)
である。なお、改定後の単価は、11月16日から適用される。

 SMPの補助金単価は、2000年7月にゼロにまで引き下げられていたが、今回の
単価引き上げで、4ヵ月ぶりにSMPに対する輸出補助が再開されることとなった。


 SMPに対する輸出補助再開の背景としては、@国内のSMP需要の低迷、AE
U産SMPの価格競争力の低下による輸出減少などが挙げられる。

 SMPについて、EUの需給状況を見ると、2001年のEUの生産量(1〜8月)
は、チーズの生産拡大を受けて、前年同期比10.4%減の69万6千トンにとどまった。

 一方、域内需要も大幅に落ち込んでいるとみられる。今年初めの口蹄疫の発生や
牛海綿状脳症(BSE)問題による牛肉生産抑制策の影響で、子牛向けを中心にS
MPの飼料需要が大幅に減少した。EUにおいては、飼料向け利用がSMP消費の
約半数を占めるだけに、域内需給に与える影響は決して小さいものではない。SM
Pの域内価格は2000年に入り高騰していたが、同年末をピークに、飼料用および食
用ともに顕著に低下している。2001年10月のフランスにおけるSMP価格(暫定値)
を見ると、飼料向けで前年同月比18.6%安、食用向けで15.8%安となっている。

 また、SMP価格の低下については、域外向け輸出の不振も大きな要因の1つと
なっている。EUのSMP輸出価格(積出港価格)は、国際的な需給ひっ迫から、
2000年8月以降、トン当たり2,000ドルを超す記録的な水準で推移してきた。しか
し、最近の国際的な経済不振や原油価格の低下により、産油国の購買力が減退する
中で、相対的に価格の高いEU産SMPは国際市場での競争力を失いつつある。さ
らに、@ユーロ安基調で推移していた為替相場が2001年に入り反転したこと、A輸
出補助金が徐々に削減されたことも、輸出価格の引き下げを鈍化させ、EUのSM
P輸出不振の要因となっている。

 EUとは対照的に、ニュージーランドなどオセアニア諸国はSMP輸出を順調に
増加させていると言われている。今回の輸出補助の再開は、フランスなどEU主要
酪農国がEU委員会に対し、強く働きかけた結果である。これは、域内価格の低下
を受けた輸出価格の引き下げに加え、輸出補助金によりEU産SMPの国際市場で
の価格競争力の回復を狙ったものである。

 カタールの首都ドーハで開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議において、
11月14日に採択された閣僚宣言では、輸出補助金の段階的撤廃を視野に入れた削減
を目指すこととされた。EUにおいて、輸出補助金は、現行の共通農業政策(CA
P)の下での農産物需給調整システムの重要な構成要素の1つとなっている。新た
なラウンド交渉の進展に伴い、輸出補助金に代わる新たな需給調整システムとして、
EUがどのような方策を取って行くのか注目される。


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