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【シンガポール駐在員 小林 誠 11月15日発】タイを本拠地として東南アジア各 国に畜産関連事業を展開しているチャロン・ポカパン(CP)グループのミャンマ ー現地法人であるミャンマーCP社は、10月以降、大量の卵用若鶏を食肉市場へ放 出している。ミャンマー中央畜産連盟によるとCPの放出した若鶏の羽数は、少な くとも20万羽にのぼるとしており、鶏肉の卸売価格(通常、生きたまま販売)の大 幅な下落を招いている。9月末段階の若鶏の卸売価格は、生体重1.7s程度のもの が1羽当たり900チャット(約152円:100チャット=16.9円(実勢レート))から、 10月中旬には同660チャット(約112円)、11月中旬には同606チャット(約102円) と3割以上の大幅な下落となっている。 ミャンマーでは、同国通貨チャットの実勢交換レートの低下が続いており(公定 レートは100チャット=1,846円)、輸入資材費や原種鶏の価格が上昇している。ま た、家畜衛生関連で、同国産の落花生粕、ゴマ粕、魚粕などのタンパク質飼料には 動物性飼料からの置き換え需要が発生していることから、輸出需要が高まっており、 国内価格が高騰している。このような鶏卵生産環境の悪化から、8月中旬以降、外 国種を中心とする卵用種の飼養農家が鶏の更新を手控えており、ミャンマーCP社 の初生ひな価格もそれまでの1羽当たり160チャット(約27円)から半額の80チャ ット(約14円)にまで引き下げられている。 国立畜産公社によれば、同国の採卵農家の場合、現在の飼料費高騰下にあっては、 飼養している鶏群の1日当たりの産卵羽数割合が7割以上でないと収益が出ないと している。 しかし、採卵農家の中には、ミャンマーCP社の供給する卵用鶏の産卵羽数割合 はせいぜい6割だとするものもあり、同社の初生ひなの需要低下につながっている。 同社は、ひな、生産資材、生産技術などをパッケージにした契約育すう農家制度を 運用している。採卵農家は、ふ卵場から直接初生ひなを購入し、育すうから採卵ま で行うものとCP社が契約育すう農家で育成した若鶏を購入して採卵を行うものと がいる。しかし、卵用若鶏の需要もほとんどないことから、同社は一時的に新規の 育すう契約を中止しており、育すう期間終了後の卵用若鶏を食肉用に放出している。 新規の育すう契約は停止しているものの、既契約分については育すうを継続してい るため、同社の卵用若鶏放出は12月末頃まで続く見込みである。 このようなミャンマーCP社の動きと同様、同国のふ卵大手3社の一角をなすマ イ・カ産業社も、いったん合意していた、デカルブ系の中規模ふ卵場との契約によ る生産規模の拡大計画を中止している。一方、大手のうち、同国北部にある国内第 2の都市マンダレーを本拠地とするウ・アイ農場は、他の2社とは異なり、あくま でも初生ひなの生産を継続していくとしている。同農場の経営者は、ミャンマーで は鶏肉、鶏卵共に常時不足しているため、ミャンマーCP社のような、一時的事情 で供給停止をするのには反対であり、初生ひなの生産・供給を継続していくとして おり、ひなの価格も1羽当たり5チャット(約0.8円)までなら引き下げるとして、 同国の養鶏産業の維持・継続のため、徹底抗戦の構えである。
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