ALIC/WEEKLY
【シドニー駐在員 幸田 太 9月27日発】豪州酪農庁(ADC)は、2000/01 年度の乳製品輸出額が初めて30億豪ドル(約1,800億円:1豪ドル=60円)を突破 したことを発表した。国内生乳生産量は天候不順や昨年7月に実施された酪農乳業 改革の影響により前年比で2.7%落ち込んだものの、豪ドル安と堅調な国際市況に 支えられ、好調な輸出を物語る結果となった。 今回の発表は、2000年7月〜2001年6月まで12ヵ月間を対象としたもので、輸出 額は前年同期の24億豪ドル(約1,440億円)を25%も上回る30億豪ドル(約1,800億 円:1豪ドル=60円)となった。 この要因としては、昨年から現在も続いている記録的な豪ドル安を背景に、酪農 製品のみならず、輸出産業全体が、活況を呈していることが挙げられ、また、EU の輸出補助金の削減により脱脂粉乳などの乳製品の国際価格が押し上げられるなど 堅調な市況も大きく影響している。さらに、2000/01年度の豪州の国内生乳生産量 の減少が乳製品の国際市場に品薄感を与え、豪州産乳製品の品質に対する信頼性が 認められたこともあり、価格を後押しし、過去最高の輸出額を記録したものとされる。 輸出品目別では、チーズ(チェダーチーズは除く)は、約10億豪ドル(約600億 円)で前年同期比34%の上昇、全粉乳が7万2,700億ドル(約436億円)で同40%の 上昇、ホエイパウダーは同50%、脱脂粉乳は同42%の上昇となっており、その勢い がうかがえる。 一方、2000/01年度の国内生乳生産量は、105億5,630万リットルとなり、天候に 恵まれた昨年と比較すると、前年同期比2.7%の減少となった。州別では、豪州の 生乳生産量の6割を担うビクトリア州で1.1%、サウスオーストラリア州で2.1%、 タスマニア州で3.1%とそれぞれ減少としている。昨年の酪農乳業改革で多くの酪 農家の離脱が報じられたクインズランド州、ニューサウスウエールズ州、西オース トラリア州ではそれぞれ10.4%、4.7%、6.3%の減少となり、天候要因とともに酪 農乳業改革の影響も指摘されている。 また、2000年7月〜2001年5月までの乳製品生産量は、生乳生産の減少の影響を 受け、昨年と比較し、全体としては微減となった。製品別生産量は、脱脂粉乳等で 前年同期と同水準の25万3,148トン、全粉乳は前年同期比12%増の19万8,663トンと 増加した一方、ホエイパウダーは同20%減の5万184トン、チーズは同3%減、バ ター、カゼインはそれぞれ同7%、同20%の減産となっている。 豪州の酪農乳業は、生乳生産量の8割が乳製品に向けられ、その約6割が輸出さ れる輸出依存型の産業であり、堅調な国際需給の影響がはっきりと反映されている。 昨年、酪農乳業改革により飲用乳の価格支持と加工原料乳の補てん金制度が撤廃さ れ、多数の生産者の離農が確認される一方、乳業界においてもニュージーランドか らの資本を受け入れるなど、豪州の酪農乳業界は激しく変動している。このような 状況の中で、今回の結果が、豪ドル安を背景とした一過性の現象なのか否か今後を 注視したい。
元のページに戻る