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【シンガポール駐在員 宮本 敏行 10月4日発】タイ酪農振興公社 (DFPO)はこのほど、2010年までの事業計画を公表した。これに よると、2001年の売上高を20億バーツ(約56億円:1バーツ=2.8円)と し、9年後の2010年はその2倍以上の43億バーツ(約120億円)と見込んで いる。その内訳を見ると、民間販売部門についてはUHT牛乳(脱脂粉 乳を原料にUHT処理した還元乳)が15億バーツ(約42億円から32億バ ーツ(約90億円)へ、低温殺菌乳が新たに4千万バーツ(約1億1千万円)、 学乳部門についてはUHT牛乳が4億バーツ(約11億円)から9億バーツ (約25億円)へ、低温殺菌乳が5千万バーツ(約1億4千万円)から1億バ ーツ(約2億8千万円)へ増収させる計画となっている。 DFPOは、全国の生乳生産の増進やその買い入れを行うなど酪農振 興を目的に設立された公的機関であり、自らも「レッドカウミルク」ブ ランドの牛乳を製造することで乳業界にも関与してきた。近年は、国産 生乳を使用した学乳用UHT牛乳を供給するなど国産生乳の余剰を解消 する役割の一翼を担っている。しかし、海外資本の大手メーカーの進出 や多くの新興乳業企業の成長によって乳業界における存在意義が薄れつ つあり、行革の波の中で民間への売却も取り沙汰されている。 近年におけるマーケティングの低迷を打開するため、DFPOは、新 たな事業の展開に着手した。2010年を最終年とする増収計画を達成する ため、2002年までに6億バーツ(約17億円)を投入すると共に、以下の4 項目の重点施策を講ずるとしている。@タイ北部・東北部における生乳 生産を増加させ、コンケン県およびスコタイ県のDFPO乳業工場への 生乳出荷を増大する。A全国に学乳用牛乳をはじめとした乳製品製造が 可能な3ヵ所のプロモーションセンターを設立し、地場の生乳市場を整 備するとともに地域住民への牛乳の普及を図る。BWTO協定に基づく 国際競争の激化を念頭に、酪農・乳業の効率化およびコスト削減を行う。 C飼料不足を補うため、コーンサイレージ・プロジェクトを発足する。 また、製造ラインの充実を図るため、2002年に低脂肪UHT牛乳や高 カルシウム、ビタミン類添加の新製品を投入する計画も発表された。こ れらは主に、ダイエットや健康志向が強い女性や年配者をターゲットに しており、新たな市場を開拓することで市場シェアの回復を目指すもの とみられる。 さらに、DFPOは今後、販路の拡大にも取り組むとしている。現在、 同公社は全国のほぼ半数に相当する35県に2年契約の販売代理店を保有し ているが、2002年までに全ての県にこうした販売網を展開したいとして いる。また、近代的な直販店の出店を計画し、その一号店を今年中にバ ンコクのDFPO事務所に併設するとしている。 現在、タイでは外資系のフォアモースト社が35%の飲用乳市場シェア を持ち、実質的な乳業界のマーケット・リーダーである。これに対し、 DFPOは前段の戦略をもって現在15%のシェアを2年後には20%に拡大 したいとしている。その実現のためには、大幅な組織改革や事業の近代 化、衛生面の強化などの難問が山積しており、存在意義が問われつつあ る公的機関が存続できるか注目されるところである。
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