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酪農生産者に団体交渉権を認める方向へ(豪州)


【シドニー駐在員 粂川 俊一 10月11日発】豪州消費者自由競争委員会(ACC
C)は10月3日、酪農生産者に乳業メーカーとの団体交渉権を認める草案を明らか
にした。昨年の酪農乳業改革実施後、生乳市場は買い手市場となっており、酪農経
営にとって厳しいものであったが、今回明らかにされた草案は、乳業メーカーとの
価格交渉において生産者サイドの要求を後押しする力となることが見込まれ、生産
者にとっては朗報と言える。

 昨年7月に始まった酪農乳業改革は、スーパーのプライベート・ブランド(PB)
牛乳の供給契約における入札に端を発した乳価の下落により、豪州の飲用乳供給地
帯を中心に各州の生産者が抗議デモを行うなど、酪農経営に多大な影響を及ぼした。
このため、先の改革によって生産者が生乳取引において極めて不利な立場に置かれ
たとして、昨年末に実施された政府による改革の影響に係る調査の際、豪州酪農生
産者連盟(ADFF)は、生産者が生乳取引の団体交渉権を獲得することを要望し、
今年初めに正式提案していた。豪州では、商業法(Trade Practices Act)により
販売側(売り手)の団体交渉権が一部例外を除いて厳しく制限されているため、そ
の取扱いが注目されていた。

 今回明らかにされた草案の概要は、2005年7月までの期限付きながら、供給方法、
品質条件、価格などについて12の特定の地域をベースに酪農生産者に対して団体
交渉権を認めるものである。ただし、交渉に際して代理人を立てることは禁止され
ている。

 ACCCは、@団体交渉への参加は酪農生産者の自主的なものであること、A乳
業メーカーは地域間の競争の下に生乳を購入することが可能であること、B小売段
階からの影響とともに乳業メーカー間の競争は確保されること、C国際乳製品価格
が豪州内で支払われる乳価に反映されることなどから、今回の草案の方針が公正な
競争を妨げるものではないとしている。

 ADFFは、今回のACCCの草案に対して、おおむね好意的であるものの、ポ
イントとなっている特定の地域ごとでの交渉単位や代理人の禁止については批判的
であり、酪農生産者はもっと力を与えられるべきであるとしている。

 また、ADFFが草案について広く関係者から意見を聴く会議の場を要求したこ
とから、ACCCは11月初旬に会議を開催した上で、今回の草案の内容を今年末ま
でに最終的に決定したいとしている。

 なお、時を同じくして、酪農乳業改革実施以後、最もその影響を受けたとされ、
ACCCから暫定的に団体交渉権を付与されていたクインズランド州の約400人の
酪農生産者が、10パーセント近い乳価のアップを勝ち取ったというニュースもあり、
団体交渉によって今後の酪農生産者の乳価の交渉力が強化されることは十分に予想
できる。

 酪農生産者にとっては、酪農経営補償制度以外に酪農乳業改革実施後の経営をフ
ォローする道筋が示された形だ。


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