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【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 10月18日発】上院農業委員会の前委員長(現 少数党リーダー)であるルーガー議員(共和党)は10月17日、主要作物についての 直接支払いや価格支持に関する政策を廃止する代わりに、新たに農家収入に着目し たセーフティ・ネットを導入することなどを柱とする次期農業法案を提出すること を明らかにした。これについて、ベネマン農務長官は、9月に公表した食料・農業 政策に関する諸原則にも整合するものであるとして、おおむね支持する旨を表明し ている。 ルーガー議員が提案する新たなセーフティ・ネットは、次のとおりである。 対象となるのは、実際に農業に従事し、原則として、年間の農家収入が2万ドル (約240万円:1ドル=120円)以上の経営体であり、すべての耕種作物および畜産 物がカバーされる。対象農家には、過去5年間の平均農家収入の一定割合(注)に 相当する価値を有するバウチャー、この場合、いわゆる連邦政府によるサービスの 引換券が、収入レベルに反比例する形で支給される(注:平均農家収入が25万ドル (約3,000万円)以下なら6%、同25〜50万ドル(約3,000〜6,000万円)が4%、 同50〜100万ドル(約6,000〜1億2,000万円)が1%)。対象農家は、農家収入が 減少するような事態に対処するため、以下のオプションに対してバウチャーを使用 し、その価値に応じたサービスを受けることができる(複数の組み合わせも可)。 @ 収入の保証割合は80%で損失額の補てん割合が100%の農家総収入保険の購入 (保険は米農務省・リスク管理局が民間保険会社を通じて提供。保険料の農家 負担分をバウチャーで支払うことができる) A 総合農家安定口座への参加(カナダのNISA(純所得安定口座)に類似した制度 であり、各農家の口座に政府が農家と同額を積み立て、純所得が過去5年平均を 下回った場合、その損失分を上限に積立金を引き出すことができる。政府積立金 はバウチャーでまかなわれる) B その他の収入保険などの購入(粗販売額の過去5年平均の80%を保証するため の、@以外の保険やその他のヘッジ商品の購入代金をバウチャーで支払う) こうしたセーフティ・ネットを2003年から導入する一方で、現行の96年農業法に 基づく農家直接固定支払いを2002年度で終了させるとともに、2003年から2006年ま での間にマーケティング・ローン制度やその他の価格支持制度を段階的に廃止する ことが提案されている。 また、環境保全に関する直接支払いを拡充することも大きな柱として挙げられて いる。これは、現行の環境改善奨励事業(EQIP)の中に土地の農業的利用を通じた 環境保全対策を設けることなどにより、その予算規模を2003年の7億5千万ドル (約900億円)から2005年には20億ドル(約2,400億円)にまで増額するというもの である。 本法案の有効期間は5年、その間の追加的な財政支出は約217億ドル(約2兆6 千億円)とされており、先ごろ下院を通過した農業法案に比べると、財政規模がか なり圧縮されている。 政府の支持を受けつつも、すでに超党派の有力議員などからは、本法案に対する 反発の声も上がっており、本法案が今後の上院における議論の本流になり得るのか、 現段階では不透明な情勢である。
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