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EU農相理事会におけるBSEの近況報告など


【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 10月25日発】10月23日のEU農相理事会におい
て、バーン委員(公衆衛生・消費者保護担当)から牛海綿状脳症(BSE)について、
フィシュラー委員(農業・農村開発・漁業担当)から牛肉市況について報告が行われ
た。概要は以下のとおりである。

1 BSE(バーン委員の発言)

 2001年1〜8月のBSE迅速検査実施総数460万頭のうち、381頭でBSE感染が
確認された。農場での死亡牛または緊急と畜された牛での発生率が高い。また、最
近BSEが初めて発見された国では感染牛の若齢化傾向が見られるのに対し、数年
以上の歴史のある国では老齢牛での発生が多くなっているのは興味深い。後者では
肉骨粉給与禁止措置強化の効果が出ているものと示唆される。

 今年の健康牛450万頭以上の検査で確認された最も若い牛は42ヵ月齢だった。こ
の結果から見ると、12ヵ月齢を超える牛の脊柱をSRM(感染性の高いと考えられ
る特定危険部位)として扱うことにしている月齢基準は厳しすぎるかもしれない。
本件は常設獣医委員会の場で専門家により議論されることになるだろう。

 イギリスでの羊におけるBSEの研究が失敗に終わったことは、非常に残念であ
る。現在のところ、羊にBSEが存在する可能性に対し予防的措置がとられている。
委員会は、羊に関するさらなる対策(統計的調査、自然発生スクレイピー株型検査
事業、個体識別の改善、抵抗性遺伝子型検査と育種計画、BSEとスクレイピーを
鑑別できる迅速検査の研究など)を提案する予定である。

 また、肉骨粉事情に関する各国からの回答の暫定取りまとめ結果によれば、複数
の国で処分能力の不足が見られる。また、国ごとの処分および保管費用の違いが大
きく、不適切な処分・保管を行った場合の問題発生を懸念している。

2 EUの牛肉市況(フィシュラー委員の発言)

 最近の牛肉消費減少率(前々年同期比)は約6%で、1年前のBSE問題の再燃時
に比べるとかなり回復している。2001年の1年間では、10%の減少(前年比)と見
込まれる。BSEおよび口蹄疫による危機からゆっくりではあるが着実に回復して
きていると言える。

 輸出に関しては、希望の持てる進展がある。エジプト政府は、個別加盟国からの
輸入解禁要請受け入れについて検討することを準備中である。

 多くの経産牛がまだ農家に保留されているが、特別買上制度はその市場支持に役
立つものである。危機の始まり以来これまでに、様々な対策の下で、合計約75万5,
000トンの牛肉が市場から排除された。市場価格の低下については、介入価格の低
下分の8割が直接支払いで補償されており、直接支払いの増加を踏まえて見るべき
である。

 (特別買上期間の延長要望に対し)特別買上制度は例外的な状況下での例外的市
場支持措置である。これまでに同制度により8万8,000トン以上の牛肉が買い上げ
られた。所期の目的が達成されたのは間違いない。もしこの制度での買い上げがな
ければ、経産牛、未経産牛の市場価格の下落はもっと急激だっただろう。消費と輸
出にいくらかの改善が期待できることから、2002年にもこの例外的な市場支持措置
が必要とは考えていない。 


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