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ブロイラーの価格低迷を懸念(インドネシア)


【シンガポール駐在員 宮本 敏行 10月25日発】近頃、ブロイラーの生産過剰や
不正輸入の増加などによる価格の低迷から、インドネシア各地の小規模養鶏農家の
経営が不振に陥っている。

 政府がこのほど公表した家畜の飼養動向によると、2001年(速報値)におけるブ
ロイラーの飼養羽数は前年比1.2%減の5億3千万羽となる見込みである。同国に
おける98年のブロイラーの飼養羽数は、97年後半から顕在化した経済危機の影響を
受け、前年比で44.8%減の3億5千万羽とほぼ半減する事態となった。しかし、経
済の回復や政治の安定とともに、2000年には早くも5億万羽台を回復し、2年連続
で高水準の生産が続いている。

 西ジャワ州のジャカルタ近郊では、ブロイラーの生産過剰から今年8月以降、鶏
肉価格の下落に直面しており、すでに全体で1千2百億ルピア(約15億6千万円:
100ルピア=1.3円)の損失が出ているという。そうした中で、養鶏農家が市場動向
を把握するための正確な情報が不足している点が指摘されている。農業省が公表し
ている1週間当たりの初生ひな羽数は1千6百万羽である。しかし、インドネシア
養鶏協会や民間の調査機関によれば、実際は2千3百〜2千4百万羽とされ、生産
者団体によると、この差異が実勢に応じた生産体制を狂わす原因の一つとしている。

 また、生産者団体は、大手のインテグレーターが市場を寡占し、違法な流通を行
っていることも大きな要因として挙げている。本来、一定の規模を持つインテグレ
ーターは、仲買人を通して製品を流通させることが義務付けられているが、最近で
は直接、末端市場であるウェット・マーケット(常温流通による伝統的な対面販売
市場)で売却するケースが目立っているという。こうした大手企業は、末端市場で
独自の価格を形成し始めており、小規模農家の経営に大きな打撃を与えているとさ
れる。生産者団体は政府に対し、速やかな抜本的対策を講ずるよう要求している。

 一方、スマトラ島北部の北スマトラ州では、隣接するリアウ州を通したマレーシ
アからのブロイラーの不正輸入が増加し、地元の価格に影響を与えているとして問
題となっている。北スマトラブロイラー生産者協会によると、この不正輸入は今年
3月から行われており、1ヵ月当たり5万〜6万5千羽が到着しているという。こ
うした安価な製品に影響を受けて州内のブロイラー価格も下落が進んでおり、通常
は1kg当たり8,000〜9,500ルピア(約104〜124円)であるが、最近は4,500〜5,000
ルピア(約59〜65円)まで値を下げている。また、これらには衛生証明がないこと
から消費者への影響も懸念され、検疫の面からも早急な問題解決を望む声が高まっ
ている。

 さらに、同協会は、大手インテグレーターが初生ひなの供給量の動向を明らかに
しないなど、業界のリーダーがその経営の透明性を欠くことが小規模農家を圧迫す
る要因になっているとしており、ここでも大企業のごう慢な経営体質が浮き彫りと
なっている。

 地域の養鶏業が抱える問題は様々であるが、ブロイラー価格の価格低迷を食い止
めるためには、正確な情報の提供や大手企業の市場独占の禁止など、生産者の立場
に立った行政施策が求められている。


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